【川床明日香 インタビュー】朝ドラ『虎に翼』で主人公の娘・優未役のアンカーを務める「優未がどういう道を選択していくのか…注目していてください」
放送中のNHK連続テレビ小説『虎に翼』で、今週から主人公・寅子(伊藤沙莉)の娘・優未役で出演している川床明日香さん。大学院生に成長した優未を演じる彼女が本作の撮影エピソードや、幅広い役を演じるようになった現在、女優の仕事のやりがいについて語った。
--『虎に翼』出演おめでとうございます!
「ありがとうございます!」
--朝ドラ出演は二度目になるんですよね。
「はい。以前『なつぞら』(2019年)のスピンオフに出させていただいてから……5年ぶり? もうそんなに経つんですね」
--朝ドラの場合、オンエアが始まって以降に新たな出演者が決まる場合も多いようですが、今回も?
「はい。番組が始まってからです。毎日ドラマを観ていて、マネージャーさんと『すごく面白いね』『今朝も観ました?』とよく話していたので、決まったときは“えっ、まさか!?”という感じでした(笑)。それまでは一視聴者として観ていて、最初は寅子さんの目線で観ていたから、もう一度視点を変えて、娘の視点で観るようにしました」
--出演が決まった時期は物語の進行で言えば……、
「新潟編から東京に戻ってくるくらい(第20週〜)です。撮影開始の少し前くらいのタイミングで決まりました」
--決まったいきさつについてですが、朝ドラだと、よく、ヒロインオーディションを受けた人の中から、決まらなかった人で役に合う人が選ばれるというパターンもあると思いますが、今回は、ヒロインはオーディションじゃなかったですし……。
「はい。いろんなことが重なって。以前『虎に翼』の監督やスタッフさんとオーディションや芝居ワークショップでお会いしたことがあって、それが大きかったみたいです。今回優未役を探すということで、思い出していただいたとのことで……」
--放送が始まってからの反響が楽しみですね(取材は9月初旬)。
「楽しみです。ただ、視聴者の方は優未役が変わるということを知らずに観ていらっしゃる状態だと思うので、少し不安でもあります。でもやっぱり出来上がったものがオンエアされるのを観る楽しみもあります」
--優未をどんなふうに演じたいと思いましたか?
「いろいろと考えました。最初に出演のお話を聞いたときに、自分が毎日観ていたことがマイナスに働いてしまわないかなと思って。ずっとトラちゃんの物語を観てきて、娘の立場では知らない部分まで見ているから、それがマイナスになってしまうんじゃないかと……。でも、それをプラスに捉えて、観てきたからこそできることがあるんじゃないかなとも思い、優未の表情や、お母さんがこういうときどんな表情をするか、そういうところはより細かく見るようにしました」
--朝ドラはクランクインする前にリハーサルをみっちりやると聞きました。
「そうですね。5年前に『なつぞら』を撮ったときと同じスタジオだったので懐かしさを感じました」
--当時はまだモデルメインで……。
「ちょうど、これから女優業を頑張っていきたいと思っていた時期でした。『なつぞら』のクランクインの前は、全然寝られなかったなと……。緊張して眠れないということがそのときはじめてだったんです。“私って眠れないことがあるんだ”と(笑)」
--それまで緊張で眠れなくなることはなかった?
「はい。でも今思えば昔のほうが緊張していなかったですね。あまり怖いものがなかったからかも……」
--怖いものを知ってしまったがゆえに?
「そうですね、知ってしまったから緊張するようになったと思います。事前に“自分にこのシーンができるのかな”とか余計に考えるようになりました」
--今回のクランクインでは?
「寝られました(笑)。リハーサルがあったので心強かったです。沙莉さんにも事前にご挨拶できていたので、安心感のあるクランクインだったと思います」
--優未はどんな大人になっているんですか?
「大学院に進学して、寄生虫の研究をしています。その後、優未がどういう道を選択していくのか、また優未の成長もぜひ見ていただきたいなと思います。最後の3週目にかけてどのような感じになっていくのか、お楽しみにしていただきたいです」
--1年以上前から動いているチームの中に終盤から入っていくのは、最初戸惑いもあったのかもしれませんね。
「そうですね、不安でした。でも本当に沙莉さんが明るく温かい方で、“途中からすみません”って思わなくて済むような現場の雰囲気作りをしてくださっていたので、それはすごくありがたかったですし、スタッフのみなさんも、『優未ちゃん大きくなったね』と言ってくださるのが嬉しかったです」
--伊藤さんはイメージ通りの方で?
「こんなに温かく面白い方だったんだと改めて思いました。とっても疲れてらっしゃるはずなのに、全然そんなふうには見せない。本当に元気をいただける方です。私は1日お先にクランクアップしたんですけど、最後の沙莉さんのクランクアップの日も現場に行ったんです。そしたら、キャストのみなさんが集まっていて、たくさんの人に愛されていたんだなと感じました」
--もともと作品を視聴者として観ていたということですが、観ていて共感できたことはありましたか?
「いっぱいありました。新潟編ではトラちゃんと優未が二人で暮らしたんですけど、私も母が働いていたので、学校から帰ってきて一人で留守番しているシーンで、お母さんが帰って来る前にちょっとだけ料理をしておく、みたいな。そういうところは自分の子どもの頃を思い出して……。感情移入しちゃうところもたくさんありました。寅ちゃんを見ていて、やっぱり何かに向けて頑張っている姿というのは、元気もらえるなと思っていました」
--今回の朝ドラをはじめ、今年は性被害を扱った映画『ブルーイマジン』だったり、意地悪なお芝居を見せたドラマ『先生さようなら』(日本テレビ)など、特に20歳を過ぎてから、幅広い役を演じる機会が目立っています。いろんな経験をして、演技の楽しさは実感できていますか?
「お芝居をする楽しさは感じるようになりました。でも、まだまだ悩みは尽きません。できるようになったと思ったら、また次の新たな悩みが出てきたり……。でも、まだまだ成長できるというのは嬉しいですし、幸せだなと思います」
--壁にぶつかったときも、しんどいというより、成長の過程を実感できて嬉しい、みたいな。
「でも壁にぶつかっているときはやっぱりしんどいです(笑)。でも、その悩みもいい経験になっていると思います」
--壁というと、たとえば役柄のことをなかなか理解できないとか?
「そうですね。いつも必ず壁にぶつかって、スムーズにできたなと思えた役はあんまりないです。自分に近いからこそ難しいというのもありますし。それこそ今回の優未も自分に近いからこそ難しかったです」
--わかりやすく意地悪したりする役のほうが?
「そうですね、違うからこそ、わかるものはあると思います」
--そういう場合は、自分じゃないものを“作る”ことに徹することができる?
「自分と違うときのほうが、その役と自分が似ている部分は少ないと思っていて。だからその少ないものからだんだん擦り合わせていくアプローチをするので一番似ている部分が見つけやすい、というのはあります」
--じゃあ、『先生さようなら』など性格が違う役柄のときはそういうふうなアプローチで? それは意外と楽しかったり?
「そうですね。あれだけ意地悪だったら(笑)。どうやったらそういうふうに見えるのかなというアプローチだったり、それはそれで楽しかったです」
--現在も、まだ解情報禁前の作品も含めて、いろんな作品の撮影に参加されているようですが、やっぱりその都度壁にぶつかっている?
「そうですね。やらせてもらう役の幅が広がってきたので、だからこそ難しさも増えましたし、その分、楽しさも増えたなと思います」
--以前のように制服の学生役だけじゃなく、年齢的にも役の幅が広がってきている中で、今やってみたい役などはありますか?
「逆に高校生役は今後どんどん自分とかけ離れていくと思うので、今のうちにたくさんやっておきたいという気持ちもあります。いずれできなくなるので(笑)」
(プロフィール)
川床明日香(かわとこ あすか)2002年7月10日生まれ、福岡県出身。2014年「ニコラモデルオーディション」でグランプリを受賞し同誌専属モデルとしてデビュー。2019年に卒業後は主に女優として活動。これまで映画『沈黙のパレード』(2022年)、ドラマ『先生さようなら』(2024年/日本テレビ)、映画『ブルーイマジン』(2024年)などに出演。
フジテレビ「街角パレット〜未来へのたからもの〜」ではレギュラーナレーションを務めている。
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