【新谷ゆづみインタビュー】映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』出演 恋愛や大人びた振る舞いの芝居にも挑戦

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新谷ゆづみ
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女優の新谷ゆづみさんが4月公開の映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』にメインキャストとして出演する。恋愛要素やちょっと大人っぽい言動など、これまで演じたことがないような役柄に挑戦している彼女。役柄を通して、恋愛や若者が抱く悩みについても語ってくれた、

--新谷さんといえば1月に出演された音楽朗読劇『星の王子さま〜きみとぼく〜』が好評でしたね。セリフと表情だけの芝居というのは自身のキャリアでも珍しかったと思いますが、やはり難しかったですか?

「はい。なかなかに難しかったです。台本を持っての芝居ということもあって。またお客さんとの距離感も結構近かったので」

--小さなライブハウスなみの近さでしたよね。あと、新谷さんのファンTシャツ? トレーナーでしたっけ? それを着て観覧されているファンの方も多くて(笑)。

「ちょっと照れ臭かったです(笑)。本番中に目に入って、“ああ、着てるな”と思って(笑)」

--歌もたくさんありました。

「結構苦戦……というわけじゃないけど、たくさんあったので、覚えるのが大変でした」

--あれだけ歌ったのは、もしかして、さくら学院在籍時以来?

「ですね」

--出演してプラスになったこと多かったですか?

「もちろん! その時その時にしか経験できないことだと思ったので、今振り返ったら、やってよかったなと思います」

--1日だけの公演だったというのがもったいない。

「そうですね、2公演1日のみで終わってしまったので、寂しかったです」

--DVDなど映像作品になることもなく?

「はい」

--あれを会場で観られたお客さんは、のちのち貴重な経験だったと思えるようになるかもしれませんね。さて、映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が4月に公開されます。今の世の中でどこか生きづらさを抱いた学生たちが、ぬいぐるみとしゃべることによってそれを解消しようとしている、大学の「ぬいぐるみサークル」を舞台に、”男らしさ”“女らしさ”のノリが苦手な大学生・七森(細田佳央太)、七森と心を通わす⻨戸(駒井蓮)を中心に若者たちの心情を描いていますが、新谷さんは二人の同級生でサークルメイトの白城を演じています。白城役はこれまでにないような役柄ですね。

「すごく大人っぽい役だなと思って。撮影当時まだ高校を卒業したくらいかな。大学生の役をしたことがなかったので、気合を入れて大人っぽく見えるように頑張りました」

--でも年齢的には、新入生役から始まっているから、ちょうど等身大なのかも。

「そうですね。でも新入生の中ではちょっと大人びているキャラクターではあるなと、原作を読んだときから思っていました。大人っぽく魅力的、でも可愛らしい……そんな白城を演じられるように心掛けました」

--結構恋愛経験が豊富のようだったり、新谷さんのこれまでのキャラクターとはちょっと異なると感じる部分も多いですが、演じるにあたって自分の引き出しからというより……。

「そうですね。大学に行ったことはなかったし、サークルというものがどういうものかわかってなかったんですけど、でもある程度サークル像みたいなものや白城の心の葛藤は、脚本を読んでいたら伝わってきたので、そこから紐解いて演じていました」

--登場人物の中で、精神的に一番しっかりしているというか、こういう言い方がふさわしいかどうかわかりませんが、一番“普通”なのが白城ですよね。

「一般的に共感できるのは白城ですよね。けど一番はじめに脚本を読んだときに、私、七森の性格に共感できて、七森も白城に憧れている部分があって、白城も七森に憧れている部分もあるなと思って。その二人が出会うのがすごく面白いところですよね」

--白城が七森に憧れているのは、一つのことに没頭できるような性格だったり?

「もちろんそれもあると思いますし、あとは諦めずに考えようとしているところ。白城は、たとえば女性に対しての社会的な問題にぶつかっても、“でも社会ってそうじゃん”とどこか諦めているところがあるんですけど、それは白城なりの自分の守り方というか、目の前の問題について自分が追究したところで何も変わらない。確かにそうだと思うんですけど、それに対して七森は、“それはよくないんじゃない?”と疑問を提示できるタイプ。かと言って行動できるかといえば、白城のほうが行動できるんです(笑)。七森の“やさしさについてあきらめたくない”みたいなところに白城は憧れているんじゃないかなと。やさしすぎるんですけどね」

--なるほど。

「白城はそれなりに恋愛もしてきて、大学に入学して以降も“二人の男性と別れた”と言ってたりして(笑)、だから人と関わったことによる成長、関わった人にしかわからない心情を白城は持っているけど、七森はそれがわかっていない。白城は人と普通に関わり合うことを大切に生きてきたんじゃないかと」

--白城は恋愛経験はそれなりにあるけど、深くは付き合ってなかったのかも?

「逆に七森は一人の人を深く知りたいのではないかと思います」

--“いいな”と思ったら付き合うけど、付き合ってみて、“あれ!? 何か違う”と思ったら、すぐ別れるみたいな?

「そうですね。そんな中で七森に告白されて、途中付き合ったりもするんですけど、それはすごく嬉しかったことだと思います。白城は、ぬいぐるみサークル以外にイベントサークルにも入っていて、そこで付き合っていた人はいたんですけど、なんかそれまで付き合った人とはまた違う種類の、七森という人に告白されたのは……。自分をちゃんと一人の人として見てくれているということで嬉しかったんじゃないかと思います」

--もう一つのサークルというのは、いかにもなチャラい系の?

「そうですね、セクハラとかもある感じの。そうじゃないほうのサークルの人にも好意を持ってもらえたというのは白城にとってもすごく嬉しかったんですけど、その七森のやさしさが回り回って、白城を傷つける、そんな感じがします」

--恋愛のお芝居というのはそんなに経験がなかったですよね。男性から告白されたり、デートの場面とか。

「そうですね」

--恋愛の芝居を特別意識するのではなく、あくまで七森という人間とのやりとりを重視した芝居ということで自然にやった感じ?

「そうですね。成長ですよね、お互いに。今までに関わったことがなかったタイプの人と触れ合って、感じることを感じて、お互いに成長し合うという、答えは出なくても寄り添っていくというような感じがあるかもしれないです。今まで付き合ってきた人とは、自分がちゃんと女の子らしくいないと嫌われるとか、そういうことを考えて恋愛してきたと思うんですけど、七森といるときはわりとフラットに、私も一人の人として見てもらえているし、私も七森のことをそう見ようと、初めて白城はそう思えたんですね。だから白城にとって恋愛の意味の幅が広がったんじゃないかなと思います」

--大人びたところがある女の子だから、恋愛となるとどうしても“男と女のいろいろ……”ということを思うのかもしれませんが……。

「そうでないほうの、本当に人として好きかどうかとか、お互いを人として必要とし合えるかどうかみたいな。そこに気付けたんじゃないかなと思います」

■悩んだことも全部仕事につなげられるというのが、この仕事のいいところ

--ぬいぐるみサークルでは世の中に生きづらさを感じている人も多くて、それをぬいぐるみとしゃべることによって解消していますが、白城は少し違いますね。

「ぬいぐるみとしゃべりたいからということではなく、そこの空間にいることによって安心できる。イベントサークルでは得られないけど、どこかあきらめきれない。そんななか、ぬいぐるみサークルという自分の居場所をみつけられたんじゃないかなと思います」

--生きづらいと感じる人たちの気持ちってわかりますか?

「今の世の中、いろんなニュースが溢れ、日常の中で嫌なニュースも簡単に目に耳に触れ、それを目の当たりにしたりすると、それにひきづられちゃって……ということもなくはないので、そういうことに感情を揺さぶられることは私自身ありますね」

--七森役の細田さん、麦戸役の駒井さんも、実際は生きづらさを感じているわけではないですよね。

「それは全然。でも“ぬいぐるみとしゃべる気持ちはわかるかも”とは言ってました。私もわかります。私も人に気軽に相談できるタイプではないので、解決しようとなったときには自分と会話するかメモするか。その一つの手段としてぬいぐるみと話すことも全然ありだなと思うので」

--そういう人って、日記に書くとか、きちんとした形でなくとも思ったことをつらつら書きなぐるだけでも、気持ちが少し救われることもあるように思います。

「そのタイプかもしれないです、私も」

--それが劇中のサークルのメンバーにとってはぬいぐるみとしゃべるということで。

「そうですね。やっぱり世間的に自然な行動と思われているわけではないと思うけど、サークルがあることで、仲間がいることで安心感がありますよね。やっぱり“ぬいぐるみとしゃべってます”というとどうしても変わった目で見られるんじゃないかというところを、サークルとして仲間がいるから、みんな安心してしゃべっているんだろうなと思います」

--そもそも“ぬいぐるみとしゃべる”サークルでなく、“作る”サークルなんですよね?

「あくまで“作るサークル”を謳っているんですけど、実はしゃべるサークルなんですよ、という(笑)」

--新入生が勧誘のチラシを見て“ぬいぐるみとしゃべるサークル”とあると、ちょっと引いちゃう人も多いかもしれませんからね。

「それがまた“らしい”ですよね。表向きは恥ずかしくて、本当のことは言ってない。……らしいなと思います(笑)」

--今回、大きな動きがある芝居ではないけど、会話劇が特に見どころですよね。二人のセリフのやりとりで見せるような。こういうお芝居は……」

「好きですね。やっぱり会話が基本だなと思うので。麦戸ちゃんと二人で座りながら喋ったりするシーンも楽しかったです」

--七森と二人のシーン、たとえば商店街を歩いているときの二人の会話の独特な間や空気感がよかったですね。微妙にできる間も自然に?

「自然ですね。相手のセリフが来て、それに対して自分の思いを返す。演じているときは、頭で計算したりもせず……」

--台本に“何秒くらい空けてセリフを言う”……みたいな指定もなく?

「まったくないです。考えずにやってました。自然な間ですね」

--二人のやりとりから自然に生まれる間や空気感は醍醐味かもしれませんね。さて、完成した作品を見て、撮影当時の自分のお芝居や表情を見て改めて感じることはありますか?

「ちょうど高校を卒業して、平日が暇になるなと思っていたタイミングだったので、そういうちょっと不安な顔も出ているなと思いました」

--今の仕事をしている以上、その不安はついてくるものだと思います。

「そうですね」

--うまく回っているときでも、“あれ、これでいいのかな”という迷いが生じたり。たとえば自分がやりたい、やるべきと思うことと、周りが求めるイメージとが……、

「違うっていうね。それも多分ありますよね」

--今度悩みにぶつかったときに、ぬいぐるみに話しかけてみるのも?(笑)

「でも悩んだことや経験したことを全部仕事につなげられるというのが、この仕事のすごくいいところだと思いますね。悩んでも、それがいい形で役に活かせるもしれないし」

--めっちゃくちゃ悩んでいるときにも、どこかに、女優として客観的に自分を見られる目ってありますか?

「うーん……ありますね」

--すごく落ち込んでいるはずなのに、もう一人の自分が、“この感情をよく覚えておけよ。いつか芝居で活かせるよ”と話しかけてくるような。

「あります。悩んだときに解決しようとすると、“仕事に活かせばいいじゃん”って思える、それはありがたいかも。“何事も経験じゃん”って」

--そう考えられる人は生きづらくないかもしれませんね(笑)。

「そう考えられたときはスッキリするし。そうならないときは、そう考えようと心掛けます」

--最後に改めて映画の見どころを。

「やさしさの形って正解はないので、自分なりのやさしさというものを信じて、誰かにそのやさしさを与えることができたらいいのかなと思うんですけど、その自分のやさしさを信じていこうと、この映画を観て思っていただけたらいいなと思います」

(プロフィール)

新谷ゆづみ(しんたに ゆづみ)

2003年7月20日生まれ、和歌山県出身。2014年少女漫画雑誌『ちゃお』(小学館)主催の「ちゃおガール2014☆オーディション」で準グランプリを受賞したことをきっかけに芸能活動を開始。2016年「さくら学院」のメンバーに加入、2019年3月まで在籍した。その後本格的に女優活動を開始。映画『麻希のいる世界』(2022年 ※主演)、ドラマ『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系、2022年、※1話2話メインゲスト)、映画『(Instrumental)』(2022年、※メインキャスト)などに出演。

映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は4 月 14 日より新宿武蔵野館、渋谷 ホワイト シネクイントほか全国ロードショー 4 月 7 日より京都シネマ、京都みなみ会館にて先行公開。

ストーリーなど詳細は公式サイトにて。
https://nuishabe-movie.com/

ヘアメイク/坂本志穂 スタイリスト/世良 啓 衣装協力/ToU I ToU SERAN

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