古川琴音、7年ぶりの写真集「見ている人の心の風景と重なる写真集になればいいな」

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女優の古川琴音さんが6日、7月3日に発売された2作目となる写真集『CHIPIE』(講談社)を記念し、代官山 蔦屋書店で会見を開いた。

写真家の松岡一哲氏と7年ぶりのタッグとなった今作は、古川さんが映画祭で訪れたドイツ・フランクフルトを舞台に、5日間にわたって撮影された。スケジュールの合間や映画祭の裏側にもカメラが密着し、ドキュメンタリーに近い手法でシャッターが重ねられた。俳優としても一人の女性としても、未完成ゆえの可能性を秘めた古川さんの現在地を記録した、映画のような一冊となっている。

会見に登壇した古川さんは、発売された心境について「やっとこの日が来たなという感じです」と感慨深げに語った。松岡氏から写真集制作の話を受けてから約2年が経過したと明かし、「構想も撮影も、出版に至るまでの過程も、本当に一つ一つ丁寧に作った大切な写真集ですので、早くみなさんに見ていただきたいです」と笑顔を見せた。

周囲からの反響も届いているといい、「友人からは『届いたよ』と連絡をもらいました。家族は、駅前に貼ってある大きなポスターを見に行ったりしてくれたようです」と報告。さらに、「さっきもメイク中にヘアメイクさんたちが写真集を見てくれていて、驚いていたり、『嘘がないね』と言ってくれたのがとても嬉しくて。ほかのみなさんがどんな反応をされるか、今からとても楽しみです」と期待を寄せた。

写真集のタイトル『CHIPIE』は、フランス語で「おてんば」を意味し、猫によく付けられる名前だという。タイトルに込めた思いを問われると、「古川琴音の写真集ではあるけれど、スナップ写真のように、どこの国でどう過ごしてきた女の子なのか分からないような写真集にしたい、という話をしていました。それで、私じゃない女の子の名前を付けたいなと。色々探すうちにこの『シピ』という響きや、猫の名前という点が気持ちにフィットして、この名前にしました」と由来を明かした。

制作では、衣装も古川さん自身がその時の気分で選んだ。スタイリストの家で好きな服をピックアップしたほか、現地の古着屋で購入したものをそのまま着て街を歩くこともあったという。「本当にその時の自分のムードに合うものをその都度着させていただいた」と振り返る。

作品のテーマについては、「私の写真集でありつつも、見ている人の心の風景と重なる写真集になればいいなと思っています。この写真集の中に一枚でも、みなさんと繋がりあえる写真があればいいなという思いで撮っていました」と語った。

会見では、特にお気に入りの一枚として、物憂げな表情で鏡に映る自身の姿を捉えたカットを披露。この写真は、映画祭と撮影を交互にこなすハードなスケジュールの中、疲労がピークに達していたときに撮られたものだという。「初めての海外映画祭で、常に『あなたは何者なんですか』と問われているような気がして、少し思い詰める瞬間もありました。当時の自分の気持ちは、さなぎの中でぐちゃぐちゃにこもっているような感じでした」と当時の心境を吐露。

続けて、「この写真を撮られた瞬間のことは何も覚えていないんです。でも初めて写真を見た時、自分でも見るのが怖いと思っていた混沌とした表情がこんなに綺麗に写っていることに感動しました。当時は孤独だと思っていましたが、周りのスタッフの皆さんが、こういう温かい眼差しで私を見ていてくださったんだなと分かった一枚です」と、特別な思い入れを語った。

撮影地フランクフルトでの思い出については、名物のホワイトアスパラガス料理「シュパーゲル」を挙げ、「すごく気に入って、自由時間がない中で2回も食べに行きました。フランクフルトだけソースが違うらしく、それがおいしくて」と食いしん坊な一面をのぞかせた。

一方で、撮影は過酷な側面もあったようだ。湖に入るシーンでは、「まだ6月でフランクフルトも寒い時期。湖から上がった時は本当に寒かった」と回想。カメラマンの松岡氏が寒さで震えていたことが印象に残っているといい、「寒さだけじゃない気もするんですけど、なんだかおかしかったなと思います」と笑った。

7年ぶりにタッグを組んだ松岡氏との関係性について聞かれると、フランクフルト到着初夜の出来事を挙げた。「ホテルのバーで二人でお酒を飲んだのですが、そのときが一番緊張していました」と告白。7年前に発表した写真集『ペガサス』の存在が大きく、「もう一度作品作りができる嬉しさと同時に、『ペガサス』を意識せざるを得ない怖さのようなものがありました。松岡さんも同じ気持ちだったと思います。戦友と戦う前に一杯交わすような、そんな夜でした」と、独特の緊張感を振り返った。

7年前の自分との変化については、「当時は撮られる意識もなく、純粋に楽しんでいる姿が写っている。今回はもっと自分の奥深くに入っている感じがする」と分析。一方で、変わらない部分として「一哲さんと写真を撮るときはレンズを全然意識しない。カメラが消えるんです。それは7年前も今回も変わらなかった」と、松岡氏への絶大な信頼を口にした。

今後の目標を問われると、「英語をもっと頑張りたい」と即答。フランクフルト映画祭で海外の観客と交流した経験から、「もっと自由に話したいし、もっと自由に表現したいというもどかしさを感じた。この経験が、海外で仕事をするのか、何につながるかは分からないけれど、海外への扉になったかなと思っています。仕事にもプライベートにもつなげていきたい」と力強く語った。

最後に、「個人的にはとても思い入れの強い作品ですが、皆さんにはニュートラルに見ていただきたい。その中で、皆さんの心の風景と重なる写真があったら本当に幸せです。ぜひ楽しんで、何度も見ていただけたら嬉しいです」とメッセージを送り、会見を締めくくった。

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