【北原里英インタビュー】映画『神さま待って!お花が咲くから』で初の医師役に挑戦「ぜひ親子で見てほしい作品」

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脇坂和美役/北原里英
脇坂和美役/北原里英

女優の北原里英さんが映画『神さま待って!お花が咲くから』に出演、現在公開中だ。舞台は広島県福山市。小児がんを抱えながらも明るく生きた森上翔華さん(享年12歳)が巻き起こした「ファンタジー」なエピソードをヒントに、生きる喜びと笑顔を広めようと制作された本作。余命0年と宣告されながら、病に支配されることなく、自ら人生を創っていった翔華さんが前向きに生きる姿を描く。

本作で翔華さんの主治医である小児科の脇坂医師を演じているのが北原さんだ。彼女が本作の魅力、脇坂医師を演じた思い、そして物語の主人公と同年代だったデビュー前秘話や“古巣”AKB48へのこれからへの思いも語ってくれた。

--脇坂医師は優秀でありながらシビアでクールな役柄。特に物語前半ではちょっと冷たさすら感じます。

「そうですね。私自身が明るいタイプで、クールな役柄に挑戦したいという思いがあったので、今回いい機会をいただいたなと思いました。でも芯があたたかい女性ではあったので、そういう点では理解できる役柄でした」

--物語が進む中で脇坂医師の過去の辛い経験も見えてきますね。

「お医者さんは人の死に対して冷静に接しないとしんどいというか、一つ一つを全身で受け止めていたら絶対おかしくなってしまうと思うので、そういう点はすごくわかるなと思いました。“なんでこんなに冷たいんだろう”という気持ちはなく、脇坂という役に対して、寄り添って演じられたんじゃないかなと思います」

--脇坂先生は医者になった頃は、患者が命を落としていく度に全身で受け止めてしまっていた。

「人の死を救うために医者になったのに、救えない……それはしょうがないことではあるんですけど……。でも登場人物全員すごく愛のある人たちなので、作品自体に寄り添える映画で、初めて脚本を読んだときも涙が出ましたし、これは絶対泣いちゃう話じゃないですか」

--翔華ちゃん(新倉聖菜)がいい子なんですよね。「こんないい子が……」と思うと……。

「撮影期間に実際の翔華ちゃんが描いた絵本を読んだんですよ。でも、読んじゃうと脇坂としてクールに接することはできないなと思ったので、最初のうちは読まずに置いておきました」

--やっぱり、そこに北原里英さん自身の感情が入っちゃう?

「私すごく涙脆いので……」

--翔華ちゃん役の新倉聖菜さんとは初共演ですよね。

「はい。私、子どもがすごく好きなので、現場に子どもたちがいることがすごく嬉しかったです。聖菜ちゃんはそこまで子どもっていうほどの年齢ではないですが……」

--撮影当時は中1くらいでしたっけ。脇坂医師は翔華ちゃんにクールに接する役柄ということで、聖菜さんに対してカメラが回っているとき以外も意識して距離を置こうとすることはなくて?

「でも、置きましたね。がっつり一緒になるシーンを撮る日には冷たく接する芝居だったので、撮影時間以外もあえてそんなにフレンドリーには話さないようにしました。本当は『学校で何が流行っているの?』とか、そういう話もしたかったのですが……。撮影の日はスケジュールがタイトなこともあり、自分自身も集中しないとできないなと思ったこともあって」

--彼女も今は15歳になっています。

「この前聖菜ちゃんのXを見に行ったらめっちゃ大人になってました。アプリを使ってるから、最初わからなくて(笑)。こんな若い子もこんなにアプリ使うんだとびっくりしました」

--このくらいの子って素で全然いいんじゃないかと思いますね(笑)。

「そう、肌もきれいだし、どこを加工する必要があるんだろうと(笑)。でも中学生ってそういうのに一番敏感な年代だから、自分のことを思い返してみれば当たり前なんですけど。私が接したときは、より子どもっぽいときの聖菜ちゃんだったから、びっくりしました。あと友達役の夢空ちゃんも、Xで見たときなんて、すっごい大人でもっと驚きました!(笑)」

--中学生くらいって女の子が一番変わるタイミングですから。

「一番成長する時期ですからね」

--撮影時特に印象に残っていることは?

「翔華ちゃんとのシーンも多かったけど、印象に強く残っているのはお母さん(渡辺梓)とのシーンです。お母さんに翔華ちゃんの病状を報告して泣き出す、そういうやりとりが辛かった。やっぱり親側の気持ちになったというか、子どもはいないですけど、“子どもがもし大きな病気になったら……”とか、自分が、というより親目線になってしまうので、お母さんとのシーンのほうが心が辛かったです」

--聖菜さんのお芝居に刺激を受けたことも?

「あの世代の子って、素直というか、余計なことを考えずに……実はいろいろ考えているかもしれないけど(笑)……、素直なお芝居をするじゃないですか。そこがやっぱり大人の役者にはない魅力なので、すごくうらやましいなと思いました」

--北原さんが聖菜さんの年齢のときには、まだ普通の中学生だった?

「私は16歳で芸能活動を始めているので、まだデビューしていませんでした」

--北原さんはAKB48としてアイドル活動を始める前は、女優志望だったんですよね?

「はい。女優になりたかったです」

--ご出身の愛知県でも活動する場所はあったと思いますが、やっぱり東京と比べると活動の場は限られていたのかも。

「そうですね。でも当時は『中学生日記』が放送されていたり、名古屋でも活動できる場はありました」

--『中学生日記』はNHK名古屋で制作、全国放送されていた学園ドラマで、名古屋を中心に活動する子役や俳優志望の小中学生には「出たい」という人も多かった作品です。

「そう、だから名古屋は活動の場がないわけではなかったとは思うんですけど、私東京に出てきたかったので、女優になりたいのと同時に……」

--14、15歳くらいで?

「いや、その頃は大学で上京したいなと思っていました」

--アイドル活動がなければ、高校生のうちは地元在住で活動しながら?

「そうですね。芸能の仕事はしたかったんですよ。当時もいろんなオーディションを受けていたし、『中学生日記』のオーディションも受けたことありました。高校時代は仕事が東京であったらその度に上京して、それで大学で上京できたらいいな、くらいのつもりでいました」

--そしたら、予期せぬ……予期せぬじゃないと思うけど(笑)。

「そうですね。予期せぬ……という感じです(笑)。上京することになって。自分としてもだし、親としても高校生から娘を親元から手放すとは思ってなかったと思うので、よく出してくれたなと本当に思います」

--オーディションに合格してすぐ上京?

「もうレッスンに呼ばれてからすぐに行きました」

--たとえばグループで人気メンバーになって、ある程度見通しがついたら……というのだと、ちょっとは安心だと思いますが。

「人気になるかどうかどころか、劇場デビューもしてなくて、『“研究生”ってなんだろう』という状態。本当によく行ったなと思いますし、親もよく出してくれたなと思います。それに当時のAKB48で人気メンバーになったところで、正直どうなるわけでもなかったし」

--まだ世の中的にブレイクしてるとはいえない時期ですね。

「そうですね」

--でも、アイドルとして成功しなくても、上京していたら、いろんな映画やドラマのオーディションを受けられたりチャンスは広がります。

「いや、当時は何も考えていなかったですね。今だったらいろんな可能性を考えて、天秤にかけて“ギリ東京に行ったほうが得かな”と考えて上京する……みたいな判断があると思うんですけど、そのときってもっとまっすぐな思いで行ってたと思うので、そういう若さゆえのまっすぐさというのは今思えば眩しいですね。この映画もそういう面もあると思いますし」

--内容的には悲しいですけど、物語が持つ爽やかさとともに、生へのエネルギーを感じます。

「この作品は実話なので、実際に我が子を亡くして今も生活しておられる中で、こうして映画化することを了承してくださったご両親には感謝だと思います。私、実話の作品に出るのは確か初めてで、演じさせていただくことの難しさはすごく感じました」

--それは映画化を了承してくださったご家族への責任感だったり?

「そうですね。失礼がないように演じたいと絶対に思うし、この映画を見られたらときにガッカリしてほしくないので、そこはすごく緊張しました。私は関係者の方には誰にも会ったことはないので、今でも大丈夫だったかなという気持ちはあります」

--それは、台本を読んで感じたものを自分が持てる最大限で演じられたとしたら、それでいいのではと思います。ご両親と会っているスタッフがOKといえばそれを信じるだけですよね。お医者さんの役を演じるのも……、

「初めてです」

--演じるにあたって、知識を仕入れたり、佇まいを工夫したり考えたことは?

「やっぱり私の今の人生では医者になることはないと思うので。お医者さんって昔はもっといろんな人がなれる可能性があると思ってたんですよ。だけど大人になって、実はなるのがめちゃくちゃ難しいということを知って、今の自分にその雰囲気が出るのかと心配だったんですけど最大限努力はしました」

--客観的に見てその雰囲気は出てましたよ。

「本当ですか?」

--医者らしい威厳がありつつ、どこか優しさが滲み出るような。

「よかったです! 小児科でよかった(笑)」

--撮影は広島の福山で?

「はい。1年半前くらいになります。私は一日だけの滞在でしたが。でも個人的に福山や広島には縁があって、福山にお友達が住んでいるのもあるんですけど、YouTube撮影でも行ってまして……」

--なんでまたYouTubeを福山で?

「夫(笠原秀幸)が福山の遊園地に関わる仕事をしていまして、それで何回か行ったことがあって、年に一回くらいは遊びに行ってるんです。先日も広島の尾道にも行きまして、小説(著作『おかえり、めだか荘』)のイベントをやらせていただいたりとか、土地に馴染みがあったので、広島・福山が舞台というのは嬉しかったです。この映画を通じて福山の良さを知っていただける人が増えるのも嬉しいです」

--ところで、GirlsNewsにはAKB48ファンの読者も多いですが、北原さんは最近のAKB48の楽曲だったりニュースだったり、目にしたり耳にしたりしますか?

「ニュースでやってたら見ますよ。“ゆきりん(柏木由紀)がソロコンやったんだ”とか“ひぃちゃん(本田仁美)が卒業したんだな”とか“みーおん(向井地美音)が総監督を退任するんだな”とか、結構見てますね、“CDTV”とか歌番組に出ていたら観てますよ。ゆきりんが4月で卒業すると思うんですけど、ゆきりんがいなくなると一気に別グループのような感覚になると思います」

--今の中心メンバーで、北原さんが現役時代一緒に活動していたのは、もう柏木さんくらい?

「ゆいゆい(小栗有以)とかみーおんも活動時期がかぶってはいるんですけど、やっぱりゆきりんがいなくなるのは大きいなと思います。AKB48は、ゆきりんが卒業してからが勝負かなと思っていて、ゆきりんがいると(メディアや視聴者は)どうしてもゆきりんを追っちゃう。彼女がいなくなることはピンチだと思いますが、それをチャンスとして活かせたら、もう一回トップに返り咲くチャンスかなと思って。またAKB48がドカンといく日が来るんじゃないかと思っているので、どういうふうに変わっていくか楽しみに見ています」

--最後に改めて、『神さま待って!お花が咲くから』の見どころをお願いします。

「この映画は悲しい実話をベースにはしているんですけど、そうとは思えないくらい前向きな映画だと思っていて、観た方は『生きよう』と、より強く思える作品になてると思います。明日を生きるパワーの源になる作品だと思うので、多くの人に観てほしいと思います。親子で観てもらうのもいいんじゃないかと思っていて、自分が小学生だったら、この映画を観たら、その後の生き方に影響していきそうだなと思います。ぜひ子を持つ親御さんは親子で映画鑑賞をしていただけたらいいなと。しっかり心に残る映画になっています」

--全国〇〇系何百館ロードショーみたいな作品ではないけど、本当にいい映画なので多くの人に見てもらいたいですね。

「そうですね。公開期間が終わっても、小学校の映画鑑賞会などで上映してもらったり、長く子どもたちの目に触れる作品になればいいなと思います」

〈プロフィール〉

北原里英(きたはら・りえ)

1991年6月24日生まれ、愛知県出身。2007年、オーディションに合格し、翌年AKB48のメンバーとしてデビュー。一躍人気メンバーに。2015年、NGT48に移籍し、キャプテンを務める。2018 年にNGT48を卒業。グループ在籍時から女優活動も並行して行い。これまで映画『サニー/32』、『映画としまえん』(※ともに主演)、舞台『新・幕末純情伝』(※主演)などに出演。

『神さま待って!お花が咲くから』は池袋シネマ・ロサほか全国順次公開中。詳細なストーリー、出演者などは下記公式サイトにて
https://kamisama.life/

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