女優の石田亜佑美がヒロイン役を務める舞台タクフェス第13弾『くちづけ』が、11月28日から12月7日まで池袋・サンシャイン劇場で上演される。初日前日には公開ゲネプロと開幕直前取材が行われた。
同作は、宅間孝行氏が作・演出を手掛ける「タクフェス」の第13弾公演。2010年の初演以来、再演や映画化を重ねてきた人気作で、今回は5年ぶりの上演となる。知的障がい者たちの自立支援のためのグループホーム「ひまわり荘」を舞台に、かつてヒット作を世に送り出した漫画家の愛情いっぽんとその娘・マコ、そして住人たちの温かくも切ない物語を描く。
今回、愛情いっぽんの娘で純真な心を持つヒロイン・阿波野マコ役を演じるのは、元モーニング娘。の石田亜佑美さん。石田さんは、作・演出兼うーやん役の宅間孝行さん、父親役の金田明夫さんらと共に舞台に立ち、物語の核となる親子愛を表現した。
取材会で石田さんは、マコ役を演じる上での難しさや手応えについて聞かれ、「感情を出し切って演じているので、公演を終えると眠いんですよね。本当に全身で、心からマコちゃんを演じています」と語った。また、役作りの過程で知的障がいを持つお子さんを持つ親御さんと交流したことに触れ、「パニックを起こしてしまったときや、どう対応してきたかという実体験をすごくリアルに聞かせてもらいました」と明かした。
さらに、「今回の『くちづけ』でみなさんにお伝えしている内容は、舞台上で描かれているだけのものではなく、本当に現実にあることなんだ、と私は受け止めています。この世の本当にあるお話だと思って大事に作りました」と、作品に込められたリアリティへの深い思いを語った。マコの性格や癖を見つけながら演じることに注力したという石田さんの言葉からは、役柄への真摯な向き合い方が伝わってきた。
演出兼うーやん役の宅間孝行さんは、マコ役について「これまで数々の人がマコちゃん役をやってきましたが、石田さんは“私に任せろ”と、“大船に乗ったつもりで最後のいっぽん役と最後のうーやん役をやってほしい”と言われたんで、大船に乗ったつもりで毎回やってます」と冗談めかして語った。これに対し石田さんは「言ってません!」と即座にツッコミを入れた。
さらに宅間さんが「『くちづけ』の映画では(貫地谷しほりさんが)ブルーリボン賞を取ってますが、その大役を『大したことない』と石田さんおっしゃるんで」と再び冗談を飛ばすと、石田さんは「言ってません!」と再び強く否定。この一連のやり取りを見ていた浜谷健司さんは「今の『大したことない』と『大船に乗ったつもり』はもう完全に(記事で)切り取られますね」と、報道陣を煽って会場の笑いを誘った。
共演の女性キャストには、バラエティやドラマ、舞台で幅広く活躍するベテランや注目の若手が集結した。国村真理子役には鈴木紗理奈さん、袴田さん役には小川菜摘さんが名を連ねる。また、宇都宮智子役を加藤里保菜、ちーちゃん役を町田萌香、国村はるか役を宮城弥生、みなみ役を神月柚莉愛がそれぞれ務めるなど、個性豊かな女優陣が脇を固める。
今作では、初演から愛情いっぽん役を演じてきた金田明夫さんと、うーやん役の宅間孝行さんのタッグが最後となることも明かされた。金田さんは「芝居はやっぱり100人いれば100人の見方が違うと思う。賛成する方もいれば、反対する方もいるし、面白いと思う方もいるし、つまらないなと思う方もいるかもしれない。それがあるから面白いんだなと思いながら、色々な人からの多々ある意見を聞きながら演じることがすごく大切だと思っています」と、多様な視点で作品を楽しんでほしいと語った。
取材会の終盤、記者から作品の内容にちなんで「ご家族以外でこれがないと生きていけないものは?」という質問が投げかけられた。石田さんは熟考の末、「支えてくださるファンのみなさんです!」と力強く回答。直球の完璧なアンサーかと思いきや、宅間さんが「(報道陣が)全然納得してない顔してる」と冗談めかして反応し、会場は再び笑いに包まれた。石田さんが「一番いい答えですよ!」と反論すると、共演者たちもほかに答えが浮かばない様子で「そうだよな」と頷いていた。
宅間さんは最後に「何はともあれ、一つの集大成という形で上演したい。お芝居を見るというのは歴史に立ち会うような側面がある。最後のいっぽん先生、金田さんの芝居、演技を、生で見届けたということを語り継いでいただきたい」と熱いメッセージを届けた。
東京公演はサンシャイン劇場で11月28日から12月7日まで行われ、その後、名古屋、大阪、福岡、札幌で順次上演される。
公式HP https://takufes.jp/kuchiduke2025/
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