【井頭愛海インタビュー】『るろうに剣心』で念願の初舞台「“ああ 今ミュージカルをやってるな”と思えて 毎日が楽しい!」

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井頭愛海
井頭愛海

女優の井頭愛海さんが5月17日から上演の舞台・ミュージカル『るろうに剣心 京都編』に出演する。2012年、小学生のときに『全日本国民的美少女コンテスト』で審査員特別賞を受賞したことをきっかけにデビュー。NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインの娘役を演じて注目されるなど、女優として順調にキャリアを積んでいるが、舞台は今作が初めて。初ミュージカルに臨む今のワクワクとした思いと、これまで演じてきた役柄への思いを語ってくれた。

--意外にも舞台は初挑戦なんですよね。もちろんミュージカルも。

「そうなんです。意外とやったことがなくて。でも舞台はやりたいとずっと思っていたので、とても楽しみです!」

--しかも『るろうに剣心』という大人気作でヒロイン役です。

「『るろうに剣心』は映画でたくさんの方から愛されている作品だし、薫も人気のある役なので、すごく責任感を感じると言いますか、イメージを崩さないようにという思いはすごくあるんですけど、そこにとらわれすぎず、でも“今回原作に忠実に舞台を作る”と演出の小池(修一郎)先生もおっしゃっているので、その薫像に近づけるように日々模索しているところです」

--初ミュージカルが、宝塚歌劇団の大御所・小池さんの演出作ということで!

「厳しいことで有名な方と聞いていたので、怯えていた、いや怯えてというとおかしいな(笑)、ちょっと緊張していたんですけど、物事をはっきり的確に伝えてくださる方で、稽古のときはエネルギッシュでパワフルな方なんですけど、それ以外のときはすごく気さくなおじいちゃんみたいな感じで(笑)、そのギャップが素敵で、ついていきたいなと思います。稽古は刺激的で楽しいです」

--薫役について事前に打ち合わせのようなことは?

「役について小池先生と一対一で話し込むということはまだないんですけど、でも、“薫はこういうふうに思っているからこういう行動をするよね”というように、稽古の流れの中で話したりはします。“息を吐くから一歩後ろに下がって”とか一つ一つの細かい動きを指示されて、そのときは言われても理解できないことも、あとから稽古の動画を見返してみると、すごくさまになっていて、やっぱり舞台での見え方を熟知してらっしゃる方なんだなと思いました」

--映像と舞台の芝居に違いを感じることはありますか?

「基本的にやること自体はそんなに変わらないんですが、やっぱり一番後ろの席のお客さんまで、そのキャラクターがどういうふうに感じているのかということをわかるように演じなければいけないんですが、それは自分が思っているより3倍くらいのイメージで演じないと伝わらないだろうなと感じていて……。映像だとアップになるシーンがあって心情がわかるんですけど、形をつけてもらったからといって、心と動きが一致していないと、一連で繋がっているように見えないと嫌なので、そこは難しいなと思います。また、わざとらしくなっても嫌だなと思いますし、それをいかに自分の中で消化してできるかというのが難しいなと思います。日々稽古で精進しています」

--共演者は舞台経験豊富な方が多いですよね。

「そうですね、小池徹平さんや加藤和樹さんをはじめ、ミュージカル、舞台経験豊富な方々ばかりで、稽古の最初からみなさんの熱量やパワーを感じたので、それに乗っかっていけるように頑張りたいなと思います。稽古で先輩方のお芝居を見ながら、“あ、こういうときにこういう芝居をしているんだ!”とすごく勉強になっています」

--ミュージカルだから歌も重要な要素ですね。

「そう歌も! みなさんパワフルで歌も上手なので、すごく助けてもらっています。そしてちょっとしたダンスもあるので、“ああこれがミュージカルか”と思いながら。私はそんなには踊らないんですけど、ちょっとしたステップみたいなものがあったり、歌は、X21(2018年まで所属していたグループ)のときの歌い方とはまた違って、セリフが音になっているみたいな感じで。今回思ったのは、映像のお芝居のときって撮っているときには音楽がかからないじゃないですか。あとからつけてもらう形で。編集を通して芝居と音楽が合わさって視聴者は感動をもらえる。舞台の芝居ではそれを生で体感できる感じで、たとえば決意したときに“ジャーン”という効果音が入って、今決意したことがわかるとか、その音楽や効果音に盛り上げられて生まれた感情が稽古場で出てくるときって、“あ、すごく面白いな”と思いました」

--歌やダンスはX21以来?

「そうですね。人前で披露することはなく、プライベートのカラオケくらいだったので(笑)。でも人前で歌うことはX21のときから楽しいと思っていたので、挑戦できるのは貴重な機会だなと思います」

--今回のミュージカルにあたって改めてボーカルレッスンも?

「しました。稽古に入る3、4ヶ月前から、歌のボイスレッスンを受けたり、殺陣の稽古をしたり。それを通して稽古に入る前に意欲が高まっていました。“よし、やってやるぞ!”という感じで」

--殺陣といえば時代劇で薙刀などもやっていましたね。

「そうですね。もともと殺陣を習っていたこともあって、今回時代劇のときに教えてもらった方にお願いして、改めて稽古をつけていただきました。やっているのとやっていないのではだいぶ違うと思うので、自分のできる限りの準備はしていって、きっとミュージカルの技術的なことでは一番新人で、みなさんについていけない部分もまだまだあると思うので、気持ちだけは強く持っておこうと」

--前段階の準備がしっかりできていると、不安な気持ちを持つことなく演技に臨めるのかも。

「そうですね。ここまでやったから大丈夫という……。まだまだな部分も多いんですけど、薫は自信に溢れた凜としている子なので、準備しておくことで、気持ち的にそれが反映されればと思います」

--X21のときって可愛い声で歌う感じでしたが、ミュージカルは腹の底から発声するイメージで。

「そうですね。X21のときはみんなでユニゾンで“楽しく歌いましょう”という感じがあって、ミュージカル歌唱は吐く息をどういう感じで吐くかということで歌い方も決まるし、吸う息でそのときの感情がわかったり、そういうことを教えていただいたときに、奥が深いな、すごく面白いなと思いました。それを考えているのと考えていないのでは雰囲気も変わってくると教わってからは、やってても難しいですけど、面白いなと思いました」

--これから本番に向けて特に磨きたい部分ってありますか?

「戦闘シーンが多い中、薫と剣心が歌う場面は劇中唯一、安らぐ場面なんです。剣心を温かく包みこんで、送り出して、迎え入れるという大事なシーンがあり、そこで二人が歌う曲があって、それを剣心と薫の思いが混ざり合うように、その歌を聴いてくださった方が“いい歌だな”と思ってくださるように歌えたら。どの楽曲もすごくすばらしくて、自分の等身大なりの薫で表現できれば、うまく伝えられるようにこれからさらに歌を頑張りたいなと思います。セットも豪華ですし、素敵なシーンもたくさんあるんですけど、そこで歌う剣心と薫のデュエットはハモリが難しくて! 普段ミュージカルを観ていて、ハーモニーを聴いていて、“キレイだな”“気持ちいいな”と思うんですけど、うまくハモれないと不協和音で気持ち悪くなってしまう。そのハモリに最初は苦戦していたんですけど、なんとか音を正確にとれるようになってきて。まだこれからが勝負どころではあるんですけど」

--歌唱シーンは楽しみですね。

「はい。あとコーラスもあるんですけど、“一人でもずれていると目立つからね”と言われていて、こういうところもみんなの一致団結、チームワークが大事になってくると思います。第一幕が終わるシーンでみんなでコーラスで歌うんですけど、難しいけど私自身ミュージカルが大好きなので、“ああ、今ミュージカルをやってるな”と思えて、毎日が楽しいです」

--初めてのミュージカルで毎日大変だなという思いより……。

「もう楽しさのほうが勝っていて、毎日稽古に行くのにワクワクしています。でも、周りの演者の方で小池先生の舞台を経験してらっしゃる方は、最後の追い込みが大変だとおっしゃるので、多分これからほうが大変なんだろうなと思います。不安もあるんですけど、でも今感じている楽しい気持ちは大事にしたいなと思います」

--これからの稽古でカベにぶつかるような経験をしたときこそ、その“ミュージカルができて楽しい”という思いは大切にしたいですよね。

「それから稽古場で『私初めてなんですよ』というと、みなさん『全然そんな感じしないね』と言ってくださって、毎日すごいなと思わされるみなさんにそう言ってもらえて嬉しいです」

--話を聞いていると周りの方とのコミュニケーションもバッチリのような。

「そうですね。同年代の子も多いですし、大先輩方もいらっしゃいますし、毎日勉強しながら、“立ち位置をこうしてみよう”とか発見があるのが楽しいです」

--芝居ってなんでもそうですが、コーラス、殺陣などキャストのチームワークとか呼吸が合ってないとうまくいかないですからね。

「そうですね。なので、空いてる時間があったら、『ちょっと合わせてみよう』と言ったり……。映像では1週間くらいで撮影が終わってしまうところ、舞台は稽古で毎日顔を合わせているので、みんなで一つのものを作り上げるという、部活をやっているような感覚で、それはとても楽しいことです」

--小池徹平さんは童顔ですけど意外と結構お兄さんで?

「36歳ということで年齢的に親のほうが近いんですけど、いつもさわやかな笑顔で! 稽古が始まる前に『頑張って!』って声をかけていただいて、嬉しいです。すごくチャーミングな方です」

--キラキラした瞳で……。

「はい。“可愛らしい”というと失礼かもしれませんが、それがすごく剣心と合ってるといいますか、剣心のようなまっすぐな瞳で応援してくださるので、『頑張りまーす!』といって稽古に臨みます(笑)。(これから始まる)第二幕の稽古では、剣心との共演シーンが増えるので楽しみです。薫が戦うシーンも最後のほう出てきたりして、まだそこまで動き回れてないので、そのシーンが楽しみです。一方で周りでたくさんの方に支えていただいて、浴衣の着方を一から教えてもらったり、すごくみなさん献身的に支えてくださって、このチームに参加できて本当に良かったです」

--今回は女優としてかなり成長できている?

「はい。『舞台をやったほうがいいよ』とよく言われてきたので、自分がどう変われるのかということがすごく楽しみですし、お客さんの前でお芝居をするのは初めてですし、その臨場感というものを考えるだけで楽しみです」

--舞台って同じ内容のプログラムだけど日によって……、

「違うっていいますよね。稽古していて思ったのが、映像の芝居って一回その芝居をやったら、何回もそのカットを撮るんですけど、その際まったく同じ芝居をしなければならないんですよ。たとえば右手がこの位置なら違う角度から撮ったときも同じ位置に右手がなければいけないみたいな。でも舞台って形は決まっているけど、“感じたままに演じていい”ということで、それって面白いと思いました」

--そういう意味で特に楽しみなところは?

「剣心とともに薫が戦うシーンが楽しみです。歌いながら戦います。セリフを言いながら、歌いながら、殺陣をするみたいな」

--さて、映像の作品も好調の井頭さん。ドラマ『妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-』(テレビ朝日系)では、不幸な出来事続きで自分のルックスに自信がなかったけど、美容整形を機にキャラが豹変するミュージシャンを演じました。

「ちょっと変わった役柄で(笑)」

--二面性が面白い。

「もう“全然別人やんか”っていう感じなんですけど(笑)」

--6月17日公開の映画版にも、井頭さん演じる“小梅”が出演しているんですよね。

「はい。ドラマ版が終わって半年後くらいのお話になっています。小梅は最初自分のルックスにコンプレックスを持っているのですが、自分に自信を取り戻していって、3話で妖怪たちと更生していきます。そして映画版では、小梅はAIの恋人にゾッコンなハッピーな女の子になっているところから始まります。作品自体がAIに取り憑かれた人々を扱う話が中心で、その最初に、小梅が恋人アプリで彼氏ができて、結婚しちゃいましたとという感じのところから始まります。この作品自体登場人物がぶっ飛んでいるので、私も普段の芝居の2倍も3倍もぶっ飛ばしてリアクションなどをやりました」

--ここまでぶっ飛んだ役柄は……。

「久しぶりでしたね。関西弁で演じた『結婚できないにはワケがある。』(2021年、ABC テレビ)では“人形大好き”というちょっと変わった女の子だったんですけど。もちろん素朴な可愛い女の子役も好きなんですけど、変わった役柄も大好きで、“やりすぎか!”くらいな感じで演じるのが楽しい! コミカルな役柄をもっとやってみたいです」

--向いてそう。関西弁のお芝居もできるし。

「『妖怪シェアハウス』では最初の本読みから自分のキャラクターを作っていったのですが、そういうのは初めてでした。もともとドラマ第一作のカラーがあって、みんなぶっ飛んでいる感じだから、私は妖怪の役じゃないけど人間の中でもぶっ飛んだ感じにしようと思って」

--二面性が際立ってますね。

「自分で見てても“嫌なやつやな〜”って思って」

--二面性といえば『さくらの親子丼2』(東海テレビ/フジテレビ系)も面白かったです。記憶喪失の状態と記憶が蘇ってからのギャップが大きくて。

「そうですよね、そういう役多いですよね、私(笑)。朝ドラ(『べっぴんさん』)でも最初はいい子だったのにぐれていったし」

--あの反抗期的な態度はむしろ可愛かったかも。誰もが通る道のような。

「そうですね。面白みのある役をいただけているので、やりがいを感じています」

--「この子はそういう二面性のある役など難しい役柄を与えても表現してくれる」という信頼感を演出サイドから持ってもらえているのかも。

「そうなんですかね。だとしたら嬉しいんですけど。もっと応えられるように頑張りたいです! 一方で『サムライカアサン』(2021年、日本テレビ系)で演じたこずえちゃんは大好きなキャラクターなんですけど」

--家族思いで、しっかり者の女子高生でしたね。

「ああいう役をやると心が洗われる気がします」

--こう考えると、本当に役柄が幅広い。

「そうですね、恵まれていますね。これからもさらに幅広い役に挑戦していきたいです。逆に悪いところからいい子になる役とか。あと、これまで学生役が多かったので、会社員役もやってみたいです。学生役は自分が体験してきた役柄だったんですけど、会社員だと自分が体験していないことなので、想像して演じなければばらない。そこが楽しみです」

--最後に改めて『るろうに剣心 京都編』の見どころを。

「『るろうに剣心』はたくさんの方々に愛されている作品。原作が大好きな方にも、今回初めて観るという方にも満足していただけるような作品にしたいです。迫力のある360度のステージも見どころです! 絶対にいいステージをみなさんにお届けできるように全身全霊で演じたいと思いますので、期待していてください。ぜひ劇場に足を運んでいただければと思います!」

井頭愛海(いがしらまなみ)
2001年3月15日生まれ、大阪府出身。2012年『第13回全日本国民的美少女コンテスト』で審査員特別賞を受賞したことをきっかけにデビュー。2017年NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインの娘役を演じて注目される。以降、映画『鬼ガール!!』、ドラマ『さくらの親子丼2』(東海テレビ/フジテレビ系)、『少年寅次郎』(NHK)、『ハムラアキラ』(NHK)、『誰かに話したくなる山本周五郎日替わりドラマ』シリーズ(NHK BSプレミアム)、『サムライカアサン』(日本テレビ系)などに出演。

『ミュージカル るろうに剣心 京都編』は5月17日(火)〜6月24日(金)、IHIステージアラウンド東京で上演。
キャスト、ストーリー、チケットなどの詳細は公式サイトにて
https://www.ruroken-musical.com/