トミコクレア、映画『小さな恋のうた』で沖縄米軍基地で育った少女を好演「基地問題は難しい問題です でも一緒に歌ったら同じ人間です」
24日に公開される映画『小さな恋のうた』で、映画初出演を果たしたトミコクレアさん。沖縄を舞台に、亡き仲間の思いを胸にバンド活動を続ける少年少女たちの姿を描いた本作で、トミコさんは、沖縄の基地に駐屯する父親を持ち、米軍基地で育った少女・リサ役を演じている。ハーフでアメリカ育ちの彼女は、この作品の撮影に入る前までは日本語をほとんど話せなかったが、撮影でキャストたちとの交流を通して、少しずつ話せるようになったという。今回、そんな覚えたての日本語で、撮影のエピソードや作品への思いを語ってくれた。
沖縄で人気を集めるある高校生バンド。リサは、そんなバンドのメンバー・慎司(眞栄田郷敦)とフェンス越しに密かに小さな恋を育んでいた。バンドのプロデビューが決まり喜びの絶頂で盛り上がるメンバーだったが、そんな矢先、慎司はある不遇な事故に巻き込まれてしまう。行く先を失ったバンド仲間たちは、友が残した思いを届けるためにリサとのフェンス越しの交流を重ねる。基地の外では住民の反対デモが行われるなか、リサが家族に心配されながらも、亮多(佐野勇斗)、航太郎(森永悠希)、舞(山田杏奈)と心がつながっていく様子を描いている。
7歳のころから演技を始め、11歳のころからアメリカでミュージカルに出演していたというトミコさんだが、映像の芝居は今回が初めて。そんな彼女にとって共演者に同年代が多い現場というのは心強かったようだ。共演者の話をすると「みんなと一緒にいて楽しかったです。ウェイティングルームでトランプやゲームしました。杏奈ちゃんとは、一緒に絵を描いたりハーモニーで『小さな恋のうた』を歌いました」と笑顔に。
『小さな恋のうた』をはじめMONGOL800の名曲にインスパイアされ作られた本作。劇中でも主人公たちのバンドがMONGOL800の楽曲を演奏する。
この映画に携わる前はMONGOL800の曲は知らなかったというが、「オーディションの前に初めて聴いて、とってもよかったです! 漢字がたくさんだったので翻訳アプリで歌詞の意味を調べたんですが、とてもいいメッセージでした。今私のプレイリストには、MONGOL800があります」とすっかりお気に入りのようだ。
撮影期間は、バンド演奏でも芝居でもみんなを引っ張っていたという座長の佐野さんを頼りにしていた様子。「佐野さんのエネルギーがとても凄かったです」と、そのバイタリティに引っ張られていたようだ。そして「森永さんはとても優しくて、ドラムも上手。大きな笑顔がよかったです。杏奈ちゃんは天使でした! 」と。ただ事故のあとバンドを脱退した大輝役の鈴木仁さんとは同じシーンが一度もなく「鈴木さんは、撮影で会えなくて残念でした」というが、映画の打ち上げで初めて会って一緒に歌えたそう。
そのときにバンドのキャストみんなと一緒にMONGOL800の曲を歌ったのがいい思い出だという。「歌詞は完璧じゃなかったけど、メロディはわかりました」と笑顔に。
また主人公たちのバンド活動を支える練習スタジオ兼ライブハウス・オーナーの根間役を、ミュージシャンの世良公則さんが演じている。「世良さんはとっても素敵な方です。ウェイティングルームで私がウクレレを弾きながら自分で作った歌を歌っていると褒めてくれました」とエピソードを明かし、「話していてオーラがすごいので、この人はレジェンドだって、すぐにそう感じました」とその存在感の強さを実感した様子だ。
撮影は昨年秋、舞台となる沖縄で行われた。トミコさんにとって沖縄は初めて。「素敵な場所でした。(撮影で)忙しかったから、あまり沖縄のいろいろな場所に行くことはできませんでしたなので、休みができたら、沖縄で海に行きたいです」と目を輝かせる。日に焼けやすいとのことで、撮影期間には海には行けなかったという。
この作品では、沖縄の米軍基地問題も扱われている。住民の反対デモの様子も描かれ、フェンス越しに育んできたリサと主人公たちとの友情も基地問題で阻まれそうになってしまう。
この作品と出合う前には沖縄の基地問題のことを知らなかったというトミコさん。「Webで読んで勉強しました。難しい問題です。でも一緒に歌ったら同じ人間です。ときどき人と人の心にはフェンスがあります。でもこの映画での若い人たちは心のフェンスありません」と思いを語る。
特に印象に残っているのは仲間たちとの別れのシーンとのこと。「私にとって最後の撮影になったシーンなんですけど、とても寂しかったです。映画の中のリサと同じ気持ちになりました。今思い出すだけでも寂しいです」と思いを明かした。
クランクインを前に、ほかのキャストとは別に、全編英語の台本をもらったという。そのおかげでリサという役柄に気持ちが入っていけたという。
初めての映像の芝居では戸惑いもあった。「ステージのお芝居では相手の目をあまり見ませんが、映像のお芝居は(感情表現が)リアルで、本当の感じ。映画の撮影ではカメラがとても近いから、本当のエモーションが大事で、芝居が“エモい”んです」と、キャストたちとの会話で覚えたのだろうか、流行り言葉も用いて説明してくれた。
クランクイン直後は、「本番」の掛け声がかかってもその意味がわからなかったとか。気付いたら本番の撮影を終えていたということもあったそうだ。でも、そのおかげで肩の力が抜けた芝居ができたのかもしれない。
また撮影の段取りにも戸惑ったという。「ステージとは違って、同じシーンを何度も撮ることも驚きました」と。角度を変えたり、寄ったり引いたり……。「はい。だから同じエモい感情を何度も演じるのが難しかったです。橋本(光二郎)監督はとても優しく、たくさんのアドバイスをもらいました」と笑顔に。
今回映画デビューを経験してこれからも映画でのお芝居をやっていきたいかと問うと「『小さな恋のうた』はとってもいいエクスペリエンス(経験)でした。これからもお芝居を頑張っていきたいと思います」との答えが。特にやってみたいジャンルとしては「アクション楽しそうですね。『ロード・オブ・ザ・リング』が好きなのでファンタジーもいいですね。歴史の映画も…」と目を輝かせる。
ハーフで女優というと、役が限られる一方、逆にいえば同年代のほかの女優にはない稀有な強みも。日本人的な部分もありつつ英会話はネイティブという……。一方で、2017年に「ミスiD」コンテストでファイナリストになったことをきっかけに、現在はアイドルグループ「Wi-Fi-5」のメンバーとしても活躍中のトミコさん。「歌が好きです。エンターテイメントのいろんな仕事がしたいです。モデルも演技も」と、今後への意欲を見せた。
映画『小さな恋のうた』は5月24日、全国公開。
〈プロフィール〉
トミコクレア
2000年9月8日生まれ、アメリカ・サンフランシスコ出身。7歳の頃から演技を始め、11歳のころからアメリカでミュージカルなどの舞台に立ち始める。2016年『ミスiD』オーディションで入賞し、そのファイナリストで結成されたユニット「Wi-Fi-5」のメンバーとしてCDデビュー。日本を拠点に活動している。
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