【日比美思インタビュー】つかこうへい舞台『ストリッパー物語』で主演 一人で入った渋谷のストリップ劇場で得られたものとは…

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日比美思
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2009年、Dream5のメインボーカルとしてデビュー、『ようかい体操第一』が大ヒットし一躍人気者になり、現在は女優として活躍する日比美思(ひび みこと)さん。昨年は、つかこうへい戯曲で人気が高い舞台『蒲田行進曲』でヒロイン役をつとめ、女優として評価を上げた。そして今年、同じく人気つか作品の舞台『ストリッパー物語』で主演する(11月1日(土)〜、紀伊國屋ホール)。稽古開始を直前に控えた日比さんに、今回の作品にあたっての心構え、準備していること、さらに11月に予定されているDream5の15周年記念イベントについても聞いた。

--舞台『ストリッパー物語』主演が決まったとき、どんな感想でしたか?

「率直に嬉しかったです。前回『蒲田行進曲』に出演させていただいたときは、とにかく走り切ることが目標というか、気持ち的に精一杯だったから、そのときに出せる全力は出し切りながらも、いつかリベンジしたい、もう一度つかこうへい作品に携われたらいいなと思っていたので、今回お話をいただいてすごく嬉しかったです」

--つか作品ならではの熱量って、やっぱり独特なものがあります。

「そうですね、パワー勝負みたいなところも最後はあったりして。とにかくものすごい熱量を使って、共演者のみなさんとぶつかり合うというのは今までにない感覚で、つかこうへい作品に出演されている方は、よく『クセになる』とおっしゃるんですけど、その感覚がちょっとわかった気がしました。これは確かに“もう一度やりたい”って思っちゃうよなって……」

--前作では自分の中では走り切れた感覚はありましたか?

「もう、そのときは全速力で。ゴールをしていたことも知らないままゴールしていたみたいな(笑)。でも後々“もっとこうしたかったな”とか“あそこはこうしたりもできたんじゃないかな”って、いろいろ考えることが多かったですね」

--それがさっきの“リベンジ”という言葉に表れていて。

「やはり台本が素晴らしいものだということがわかるし、しゃべり始めるとしゃべり切るまで、スムーズにしゃべれる、途切れることはあまりないんですけど、途切れることがない分、自分の集中力も大事だし、しゃべり切るという技術も大事だし。それが浮き彫りになる作品で本当に大変だったけど、それに挑戦する毎日というのが本当に楽しかったです」

--今回の役柄はストリッパーということで、等身大の自分とはかけ離れた役柄です。

「そうですね。自分に役柄の深みを出せるのか、みなさんの力もお借りしながらつとめたいと思います」

--自分とは違う役柄を演じることに楽しさは感じますか?

「これはまだ自分の中でたどり着けてなくて、やっぱり自分の中にあるものからしか出せないと思っていて、自分が感じたこととか、全てじゃないにしてもすごく大きな部分だと思うから、それは『蒲田行進曲』から1年を経た今の自分が挑戦できることをしたいなと思います」

--たとえ自分とは全然違う役だとしても、そこに自分のかけらが反映されてくる?

「そうですね、どうしても自分が生まれ育った環境だとか、日常生活でどういう動きをしているとか、そういうのは滲んでくるものだと思っていて、とはいえ、台本に沿って忠実にということはありますし、そこはバランスを見ながらなんじゃないかなと、私も手探りな状態ではあります」

--自分に近い役と遠い役、どちらのほうが得意というのはありますか?

「私は本当に自分に近い役柄だと、印象に残らないことになってしまうことが多くて、それが自分の課題だなと思うんですが、一方でこういう特殊な役柄だとやりやすいというわけではなく、まず身体作りからということもあったりして、難しくない役柄はないと思います。全部体当たりで取り組んでいる感じです」

--特につか作品は体力、気力を要します。

「そうですね、体力ももちろんそうですし、私集中すると周りが見えなくなっちゃって。なるべく視野を広く持てるように、と心掛けています。だからちゃんと食べてちゃんと寝て、掃除して洗濯して、みたいな日常生活も(笑)、ちゃんとしなきゃいけないな、その上でのお芝居だよな、ということは意識しながら、今回も頑張りたいなと思っています」

--女優さんって集中しなければならない役柄に入っている期間は、やっぱり全くの日常状態で過ごすのって難しいのかも。

「『蒲田行進曲』に入っている時期に親と話していたら、“ピリピリしてる”って言われました。やっぱり普段とちょっと様子が違ったみたいですね(笑)。自分では全然変わっている自覚はなかったんですけど」

--舞台を降りたあと、役に引きずられちゃう? それともパッと切り替えられるタイプ?

「うーん、あんまり引きずって大変だったことはないので、切り替えられているほうだと自分では思うんですけど。親がいつもと違うと感じたということは、ちょっと役が滲んじゃうところがあるのかもしれません」

--過去に同作品が上演された作品に出演するにあたり、過去に発表されたものに触れたりするほうですか?

「基本的には過去に発表された作品は見るほうだと思います。私はまだまだひよっこなので、吸収できるものはしたいと思うし。それが自分の糧になるのであれば、なんでも取り入れたいという気持ちがあるので」

--学べる一方、引き出しが少ない分、過去作品で演じた役者さんの演技に引きずられちゃうリスクも。

「そうですね。それはバランスだと思うんですけど、自分の軸がしっかりしていれば、あとは引き出しが増えればいいと思うので、『蒲田行進曲』の映画も見ましたし、今回も元の戯曲とかラジオドラマとか見聞きできるものには触れておきました」

--特殊な職業を演じるにあたって、特別な女性という意識で向き合う? それとも女性として本質的な部分は変わらないという意識だったり?

「私、昨日ストリップのショーを見に行ったんです、。出演されているみなさん、本当に美しくて、芸術を観ているような気分になったんですね。女性の体とか肌とか……。終わったあとちょっとしゃべってくださったりするんですけど、話し方とか、こんなに観ている側が影響を受けるものなんだなと思ったので、それでいうと、特殊な職業を演じる上で、下調べをしたり準備するということは大事ですけど、根本的には女性として何も変わらないんじゃないかなと、昨日思ったところなんです」

--ストリップを実際に見ないと、どうしても先入観で一般的なイメージで捉えてしまうのかも。

「そうですね。外側のイメージだけで演じてしまいそうで……」

--稽古の一環としてスタッフさんたちと一緒に? それとも一人でふらっと?

「一人でふらっと行きました(笑)」

--それはすごい。

「初めて行きました。自分で調べて渋谷のストリップ劇場に行って、3人の方のショーを観させていただいて、それぞれ全然違うんですね。面白かったです。やっぱり時代背景もあると思うし、今のストリップとは違うと思うんですけど、観ることができてよかったです」

--パフォーマンスのやり方が『ストリッパー物語』当時とは違う?

「選曲や衣装決めも自分で選ばれていて、特定のファンがいらっしゃる方は、リボンを投げるタイミングがあったり、全然演出が違いましたね」

--ファンとの呼吸などアイドルグループとそのファンに通じるものがあるのかも。このタイミングだとコールを入れやすいとか、リボンを投げやすいとか。

「ありました。手拍子で盛り上げるところがあったり、やっぱりお客さんを見られたことも大きくて、どういう方が見に来られてて、とか、見てて面白かったですね。すごくご年配の方もいらっしゃれば、女性の方もいるし、ショーのあと本を読んでいらっしゃる方もいたり、また新しい世界だなと思いました。やっぱり今の時代というのもあるかもしれないんですけど、匂いだったりとか、照明の感じだったり、事前に体験できたのは大きかったと思います。自分が想像していたものと全く違って、いろいろ情報を聞いたりするより、自分の目で見ることが早かったなと。全然違いました」

--自分一人で行ったのもよかったと思います。稽古の一環みたいな感じで、スタッフさんと一緒にずらっと並んで観てるのと違ってドキドキ感もあって……。

「そうですね。でも“勉強しに行きます”というより、ほんとに“何か得るものはあるかな”という感じで。あと観たかったというのもあるし。現場を経験したかったというのもあるし。一人で行きました」

--その経験を経てイメージがさらにわいてきた?

「台本を見ながら自分の中で固めつつ、稽古して共演者のみなさんと作っていけたらと思います」

--あと、演じる明美にはヒモがいるという役柄ですが、素の自分としてはイメージしにくいのかも。

「そうですよね。ヒモがいるというにも想像に頼ることになりますけど、でも関係性とかはあったとしても結局は愛の物語だなという。その気持ちを大事にしていきたいです」

-男女の恋愛の本質的なものは変わらない、と。もし今の自分の年齢で、好きな人がいて、その人が自分の収入をあてにしているような人だとしたら?

「私だったら『ごめんなさい』って言っちゃうけど、でもわからないです。本当に大好きで、愛していたら、それも許せちゃうかもしれないです。そうでしか繋がれなかったということもあるかもしれないですしね(笑)」

--日比さんが女優デビューされて約8年、その中でやっぱり昨年の『蒲田行進曲』というのは大きな存在だったのでしょうか?

「そうですね。大きかったですね。何より本当に楽しかったですし、自分の力量、技術を目の当たりにする良い機会だったなと思います」

--楽しさも感じつつ、自分の女優としての現在地を実感することができた。

「はい、本当に難しかったですね。共演者の方々、演出の方に支えていただきました。自分が読める台本の範囲を無理やり広げてもらった感じというか、幅が広がった感覚です」

--女優デビューされた頃って、たくさんいる女の子の中の一人という役も多かったと思いますが、その後女優として特に成長できた作品というと?

「ドラマとか映画で自分のポイントとなった作品はいくつかあるんですけど……」

--筆者が観た作品の中でいえば、メインの子どもたちの一人を演じた『さくらの親子丼2』は難しい役柄で成長につながった作品だったのかもしれません。家庭に問題があり悩みながらも頑張っている少女の役を熱演していました。

「みんな特殊な状況の子どもたちの話でしたね。役柄についてだったり、出演者が子どもたちでそのバランスだったり。あと、ご飯を食べながら演技をするということが本当に難しくて、良い経験をさせてもらいました」

--そして昨年『蒲田行進曲を経て、さらに演技の難しさも楽しさも経験して。

「今回も全速力で駆け抜けることになると思いますが、前回よりも少しだけでも楽しめる余裕ができたらいいなという願望があります」

--前回よりも自分を客観的に見る余裕が……。

「そうですね、できたらいいなと思いますし、言い回しも、一度経験しているのとしていないのでは大違いだなと思いますし……」

--充実した状態の今の日比さんの演技に触れられそうな舞台『ストリッパー物語』、楽しみにしています。

「精一杯今の自分ができることを頑張りたいです!」

--そして、舞台が終わる11月16日にはDream5の15周年イベントも予定されています。大原優乃さん、高野洸さんとは久々の共演となりますね。二人とはずっと連絡は取り合っていたんですか?

「いや、もはや家族みたいな感覚なので、わざわざ連絡を頻繁には取らず……。でも今回のイベントのために久々に会ったりすると、やっぱり嬉しいですね。ほっとしました」

--内容は決まってきている?

「3人での打ち合わせやマネージャーさんと話し合ったりなど、固まりつつも調整している部分もあります」

--歌とダンスの披露も?

「さぁどうでしょうか! お楽しみにしていてください!」

--ファンの人にとっては、もし当時の楽曲のパフォーマンスを見られたらエモーショナルだと思います。

「同年代のファンの方も多くて、私とおんなじ学生で応援してくださってた方も時間が経っていて就職されてたり、結婚されてたり、大人になられていて」

--ちっちゃいときに番組を観て一緒に成長してきたような……。

「そういう方とイベントで会えるのが嬉しいし、楽しみです!」

〈プロフィール〉

日比美思(ひび みこと)

1998年9月20日生まれ、神奈川県出身。11歳のとき(2009年)に「天才てれびくんMAX」オーディションに合格し、ダンスボーカルグループ「Dream5」のメインボーカルとしてデビュー。『ようかい体操第一』が大ヒットし、2014年には 『輝く!日本レコード大賞』『紅白歌合戦』に出場した。2016年グループ活動が終了後は、女優活動を本格始動。ドラマ『さくらの親子丼2』(東海テレビ/フジ系)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日テレ系)、映画『町田くんの世界』、舞台『点滅する女』、『蒲田行進曲』などに出演。

舞台 たやのりょう一座第14回公演『熱海殺人事件』『ストリッパー物語』は11月1日(土)〜9日(日)、東京・紀伊國屋ホールで上演。
出演者、内容の詳細、チケット情報などは下記にて。
https://ichiza.jp/

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