宮田愛萌「高校生って、まぶしいなって思いました」新刊『夏までに』は宮崎県日向市が舞台
文筆家の宮田愛萌が22日、東京・ブックファースト新宿店で新刊小説『夏までに』(講談社)の発売記念イベントを行った。
前作『春、出逢い』の文庫化に続き、初のシリーズ化小説となる本作を刊行したことについて、宮田さんは「とても嬉しいです。前作が出たときに、みんなに『じゃあ、次は“夏”じゃん』と言われたのですが、世の中には言霊というものがあるんですね。本当に書く羽目になって、「嘘でしょ?」って怯えていたんですけど、実際に書いてみたらめちゃめちゃ楽しくて。シリーズならではの考える時間が楽しかったです」と語った。
さらに前作が文庫化がされたことについては、「文庫本になるのが憧れでした。私は週に3回くらい書店に通う中高生時代を過ごしてきたんですけど、皆さんも文庫本の棚に行って、(自分の本だったら背表紙を何色にしようかな)って考えたことが一度はあると思ういます。文庫の新刊のところに私の名前を見つけて、めちゃめちゃ感動して、自分で乱獲したくなりました」と笑顔を見せた。
本作は、前作に続き「短歌甲子園」を題材としている。強豪校である星澤学園高等学校に舞台を移し、宮崎県日向市で開催される大会を目指す部員たちの葛藤を描いた群像劇だ。
作中の約60首の短歌を自身で詠んだ苦労や工夫について、宮田さんは「苦労した点は一作目と同じで、いろんな登場人物の歌を詠まなきゃいけなくて。そこが大変でした」と述べた。『私だったらこうしないけどな』と思っても、それは自分の気持ちであって、登場人物の気持ちではないので、そこに気をつけながら作りました」と語った。
また「今作は女の子たちのライバルみたいな関係性があったので、意識しているけども意識してないようにしている歌とかを作りたいなと思って作りました」と振り返った。
星澤学園文芸部の東雲菜海や神安海禾をはじめとする登場人物たちは、短歌への純粋な想いと同時に、強い焦燥感や嫉妬を抱えている。最初はライバル心から衝突していた菜海と海禾が距離を縮めていく過程や、先輩としての重圧に揺れる峰重陽翠や梁井紺奈の姿、そして顧問・柴田愛弥の視点が、物語に多面的な奥行きを与えている。
宮崎県日向市での高校生への取材について、宮田さんは「高校生って、まぶしいなって思いました」と、目を細めた。「独自の高校生の雰囲気があるんですよ。そういう瑞々しさが羨ましいと思いました。懐かしさもありつつ、部活に捧げている高校生ってすごい良いなって思って、それが描けたらいいなと思いながら取材しました」と語った。
短歌甲子園の試合シーンは、本作の最もスリリングなハイライトだ。自作の歌をアピールするだけでなく、相手の歌の意図を鋭く突き、論理と感性で論破し合うディベートが繰り広げられる。日常では素直になれない登場人物たちが、短歌の解釈を巡って言葉を尽くすとき、それは自分自身の内面や本音をさらけ出す手段へと変わっていく。
物語を彩る約60首のオリジナル短歌とともに、勝った者も負けた者も、短歌という鏡を通して自分の現在地を知り、少しだけ大人への階段を登っていく。日向の青い海と熱い夏の空気を背景に、言葉に縛られ、言葉に救われる高校生たちの鮮烈な瞬間を、ぜひページをめくって体感してほしい。
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