【小澤奈々花インタビュー】舞台『女盗賊 闇猫組』で主演、念願だった“殺陣”で見せる芝居に挑戦「美少女コンテスト出身のイメージを変えてみたい」

小澤奈々花

2012年の「第13回全日本国民的美少女コンテスト」グランプリで、モデル、女優として活躍する小澤奈々花さんが、7月13日 (土)~ 7月15日 (月・祝)に座・高円寺にて上演されるエンターテインメント時代劇 『女盗賊 闇猫組』で主演する。彼女にとって久しぶりの舞台、そして初の殺陣に挑戦する本作、“美少女コンテスト・グランプリ”のイメージを脱皮するような演技を見せてくれそうだ。そんな本作出演にあたり意気込みを語ってもらった。

--令和の女盗賊が大暴れする勧善懲悪の物語。殺陣あり、ダンスありのエンタメ時代劇とのことですが、舞台出演はわりと久しぶりになりますね。

「2019年以来ですね」

--前回はミュージカル作品でしたね。

「今回もミュージカルっぽい内容になる予定です。一番の見どころは殺陣なんですけど……」

--殺陣は初めて?

「はい。でも、お客さんの前でやるのは初めてですが……」

--レッスンなどでは?

「してました」

--今回の役出演が決まった経緯は?

「私からマネージャーにお願いして、舞台の主宰の会社さんに“殺陣の舞台がやりたいです”とお願いして、実現した形です」

--自ら強く望んで?

「そうです。以前別の作品のときに売り込みに行ってくださって、顔見せしてくださりそこで『殺陣をやりたいです』と言っていたのですが、そのときは役柄に合わなくて実現しなかったんですけど、今回殺陣がある役ということで実現しました」

--殺陣に関しては、実際に舞台でやりたいという希望は結構前からあったんですか?

「はい。それに加え今回の役柄にも惹かれました」

--その役柄の魅力って?

「もともと『里見八犬伝』の犬坂毛野という役に憧れていて、テレビドラマ版だと山田優さんがやっておられた男っぽい役だったんですけど、今回の香蓮も凜としていて殺陣がバキバキの男っぽい役だけど、表の姿は芸妓さんなので、しなやかに踊ったり女っぽいところもある。そういう中性的な魅力がある役です」

--もともと殺陣のレッスンを受け始めたきっかけは?

「一番最初は事務所から勧められて、「高瀬道場」で習い始めました。当時、事務所の同世代の子はみんなそこで習っていたと思います。あと以前ミュージカルに出たときに、殺陣をやる役ではなかったんですけど、周りの方の殺陣の芝居を見て、殺陣には触れていたんです。技術はなくても知識は持っていました」

--今回の舞台用に殺陣を改めて始めて?

「はい。今は殺陣とダンスを体に入れている感じです」(取材は6月中旬)

--やってみていかがですか?

「こんなに動いてバキバキしている小澤奈々花は初めてだと思いました。これまでは凜として、というよりは、結構夢見がちな子だったりとか、あとは弱いイメージの役とか、可愛いとかきれいとかが多かったので……」

--身長もあるし(171cm)、顔立ち的にもカッコいい役がはまりそうな気がするけど、意外とこれまでは少なくて?

「そうですね、「全日本国民的美少女コンテスト」出身というのもあると思うんですけど……。美少女コンテスト出身者のイメージを変えてみたい。清楚で美しくて、みたいな、そういうイメージをちょっと変えたいという思いもあって……」

--でもグランプリ受賞からもう10年以上経っているし、ある程度はその枠からはみ出すことも許されるのかも。たとえば同コンテスト出身の米倉涼子さんも、わりと早い段階から美少女コンテスト出身の枠にはまらないキャラクターを発揮されていた気がします。

「全日本国民的美少女コンテスト」出身といって名前が出るのは米倉さんや上戸彩さん。『小澤奈々花』という名前でタレントとしてどう売る?……それが自分にはわからなくて、小澤奈々花という名前で芸能界でどういう立ち位置でいたらいいのか……。でも、今は自分の好きなことに時間を使って、それで好きなことをしていれば自分も楽しいし、ファンの方も小澤奈々花が一番楽しくて、一番いい顔をしているときが好きだと思うので。好きなことをしているときっていい顔になるじゃないですか、だから好きなことをさせていただいております」

--今回の舞台で、自分からアピールして役をもらったというのにも繋がってる?

「そうですね。すごくやりたいこととがあれば自分から売り込んでやらせていただきたいですし、もしくは、自分で作るか」

--えっ!? それは自分で舞台だったり映画だったりを一から作ると?

「はい。たとえば舞台だったら、脚本、演出、音響、照明、衣装、全てをやりたいです。自分のやりたいことって、ほかの人が考えていることと合わないこともあるじゃないですか」

--たとえば事務所から勧められたものと、自分がやりたいことが合わないこともある?

「そうですね、全部ではないですが。それでやりたいことは自分で作りたいと思い……」

--今まで、完全プロデュースとまではいかなくても、作品の中に自分の意見を色濃く反映してもらった経験は?

「X21(2018年まで活動していたアイドルグループ)での活動の後半は、私は振付とか演出に意見を出させてもらっていました。今も将来に向けていろんな勉強をしています」

--X21では、サブリーダーを務めたり、リーダー制がなくなったあとも先頭に立つ役割を求められたことが多かったと思いますが。

「そうですね。でもサブリーダーだからということではなく、みんな、ものづくりが好きだったし、一人一人がこういうのをやりたいっていう思いを持つ子が多くて、それを合わせてX21というものを作っていた気がします」

--今勉強しているというのは、芝居のことだったり?

「芝居もそうだし、服飾、照明や音響の勉強もしています。あと音楽制作も、DTMを使ったり、いろんなことを学んでいます。もう毎日が吸収だらけです。それをやっていて思ったのは“クリエイターさんたちってすごい!”ということ。やりたいことをきちんと形にできる。私の場合、今までこれがやりたいって気持ちだけが先走ってた中で、それを実現してくれている方たちがたくさんいたわけじゃないですか。その人たち一人一人の重みとか、その人たちがやっていたことってめちゃめちゃすごいなということを実感します。X21のときも私たちがやってみたいと考える世界観を実現してくれる方たちが周りにいたということは、めちゃくちゃありがたい環境だったなと思います。そういう裏方さんの業務のすごさを自分でやってみて実感しています」

--えっ!? 今実際にやってるんですか?

「やってます! 学びながらやってます」

--それは具体的な作品の中で?

「実際の作品でということではなくて……」

--制作会社などでインターン的な形で?

「そうですね」

--それは自分から希望して?

「そうです。自分のやりたいことをやるために、その力が必要だと思って、身につけるべきものがあると思ったので」

--それは意外。前回のインタビュー時はまだX21時代で、そういう感じは一切なかったですよね。

「あれからもう5年以上経ってますからね(笑)」

--同世代の女優さんやモデルさんって、SNSやYouTubeなどの発信を器用にやる人も多く、たとえば表で公開されている作品がしばらくなくても、“あ、今こういう撮影やってるんだ”“最近こういうことにハマってるんだ”とか近況がわかったりしますが、小澤さんの場合、SNSなどの発信がほぼない状態ですので、ファンの人も心配しているのではと思います。

「それはX21時代から変わらずで、ファンの人からも“自己発信が苦手だよね”ってよく言われています(笑)。いつ更新するの?とか」

--SNSを通しての近況は見えにくかったので、最近どんな仕事をしているのかとか、まして裏方の仕事を学んでいるとかまったくわからなかったです。話を聞いていると、女優やモデルに限らず、音楽などエンタメを総合的に、制作にまつわる業務も含めて活動している状況なんですね。

「そうですね、音楽もだし、ファッションもだし、それで女優として舞台にも立つし」

--X21卒業後に実際作品として形になっているものは女優としての仕事が目立つ印象ですが、もっと幅広い活動を志向していたんですね。

「今はまだ幅広くて、浅いですけどね(笑)。やっぱり、その道を極めている人と肩を並べたときには、私はまだまだだなとか思われると思うんですけど、私は、結構そっちのタイプかなって思います」

--そっちの道を選ぶと時間がかかってしまう。女優なら女優にしぼって、事務所がプロモートしてくれた仕事に集中して取り組むほうが近道のように思えます。

「そうですね、タレントとして飛躍できたり、名前を多くの人に知ってもらったり、そのほうが仕事も増えると思いますが……」

--単純に知名度を上げることを考えると、そっちのほうが賢いやり方だと思います。

「だけど10年やってきて、X21時代は自分たちの意見も取り入れてもらっていたものの、基本はスタッフの方がどういうふうな見せ方をしていくかを決めてやってきたと思うので、それ以降は自分のやりたいことをしつつ、同時に求められるものもやりつつ、という感じです」

--でも素朴な疑問として、それだけ自分の中でやりたいことがあり、裏方業務も含めて学んでいる状態だと、事務所に所属する形より、完全に一人でやっていく選択肢もあるようにも思えます。あえて事務所に所属し続けるのは……

「それはオスカーが好きだからというのと、今まで自分を見続けてくれて育ててくれた事務所の方々がいるから。それに生活面でも精神面でも支えていただいたので」

--特に10代のうちはその支えが大きかったと思います。

「会長は“あなたにはモデルの適性があるから”とずっと言ってくださってて、社長にはミュージカルなど舞台をたくさん見に連れて行っていただいて勉強させていただいたんですよ。やっぱり、“この子にはこれが向いている”“ここを磨けば光るだろう”というのを長年見られている方たちだと思うので、まずはその通りにやってみる。今はモデルをしつつ、舞台やミュージカルをやったり、それを融合して、音楽とファッションもやりたいと思っています」

--当初は、同期に吉本実憂さん(Wグランプリ受賞)がいて、二人でX21を引っ張りつつ、個人では小澤さんはモデルで、映像の演技の仕事は吉本さんが多かった印象があります。

「多分、タレント性がある映像中心の女優という売り方をされたら、知名度も上がると思うし、そうじゃなくって、ちょっと違う感じの売り方というか、自分なりの表現の仕方というのもあるのかなと感じています」

--今小澤さんがモデルとしてやってみたいことって?

「ジャケットです。ジャケットを作ります。それと、音楽だったらチアダンス、ヒールを履いて踊ります。その融合のパフォーマンスで」

--??? うーん、もう少し詳しく教えてもらえますか。

「やりたいことを表現させてもらうのは難しいので、それはゆくゆくは形にしていくんですけど……。マネージャーさんも心配してくださって。みなさん的には、えっ!?えっ!?意味わかんない、って言われますけど、自分がやりたいことなのでやります」

--それは舞台芸術みたいなもの?

「そうです、そうです!」

--自分が見せたいモデルの世界を、自分で作った音楽に乗せて見せるライブショーのような?

「そうです」

--それを実現するためにマネージャーさんと話しているんですか?

「相談はしましたが、やはり自分が本当にやりたいことをやるときは一人でやらなければならないと思い、私の意見を尊重して見届けてくれています」

--オスカーに所属しながら、自分のプロジェクト的に?

「はい、やります!」

--改めて女優としての活動についてうかがいたいのですが、演じるにあたってやってみたいことは?

「自分に合う役というよりは、自分じゃない役を演じたい。どんな役でも合わせられるようになりたいです。とにかく役の子のことを考えて。自分がこれをやったら生きるだろうというよりは、その役の子をしっかり見てあげたいなと思います」

--自分の個性を出していくのではなく、役を生きる?

「そうですね。でもどっちもいると思うんですよ。“この人が演じるこの役がいい”ということが一番だと思うんですけど。だから私も“小澤奈々花が演じるからこそ”という役にもいつか出会っていきたいですが、まずは役柄を生きることを心掛けています。小澤奈々花という名前がドンと売れたときに、“小澤奈々花が演じてこそ”という役柄ができるのかなと思います」

--それは知名度に加え、その俳優さんのタレント性や強い個性も大事だと思います。小澤さんもいずれは、そういう小澤奈々花ならではの……。

「でも、そういう意味ではさっき話したファッションと音楽を融合したステージのほうが、より小澤奈々花が今は出ると思います。小澤奈々花が本当に光るのはそっちだと思います。だから最初に事務所から言われたように、モデルとして、そして音楽に合わせたパフォーマンスをやる」

--ただ個人的にやりたいということでなく、事務所の方々からこれが向いている、これを勉強しては、とアドバイスされたことをもとに、自分なりに表現したいもの、ということ?

「はい。女優としては今はまだタレント性や個性を発揮できる存在ではないと思います。ただ、その役柄について考えたり、脚本のことを考えたり、ということは好きだから……」

--お芝居をすることはもちろん好き。

「はい。でも未来のことはわからないから、今出会ったものに一生懸命取り組むことだと思います。どんなに未来を語っても能力や実行力がないと実現できないと思うので。表舞台のことも、裏方のこともいっぱい学んで、実行力をつけたいと思います」

--まずは目の前のことに全力で。今回の舞台『女盗賊 闇猫組』は自分から望んで出演したということでしたが、たとえそこまで熱望した役でなくても、持ってきてもらった作品で勉強になりそうな作品なら?

「そうですね。どんな人も生きてるいるだけで素晴らしいと思うので、魅力を感じたならどんな役でもやりたいなと思います。エキストラとかでも全然やりますよ(笑)」

--まあ、エキストラはともかく、決して出番が多くなく、作品の中の重要度的にも高くなくても魅力的なキャラクターというのはあります。そのうち自分で舞台や映画の脚本とか書きそうな。

「いやー、脚本は苦手でした(笑)」

--でした?

「挑戦していたんですけど、苦手でした。キャラクターを作るのは得意だけど……。私ができるのはキャラクターを生かすことだなと思いました」

--それは脚本家の方について勉強を?

「いえ、全然」

--完全に自分流で?

「はい、いろんな作品を見て、まずはその脚本がどういう組み立てなのかということを理解するところから始めて。実際に脚本を勉強してみると、自分目線ではあるけど演技も少しは上達したなと思います」

--演技に対する視野が広くなったのかも。

「そうですね。客観的に見たときと、主観的に見たとき、いろいろ考えられるようになりました」

--そういういろんな裏方のことも学び始めたのはX21解散後のことですよね?

「はい」

--X21の解散が2018年の終わり、その1年少しあとくらいから世の中がコロナ禍になってしまいます。

「コロナ禍で時間ができたというのもあります。自分が、“あ、これやりたいな、学びたいな”と心がときめいたこと、時間は限られているから、やりたいということをどんどんやっていきたいと思うようになりました。仕事以外でも、普通にプライベートも楽しんでますし、芸能以外にやりたいこともやっています」

--舞台を観て、この照明が素晴らしい、音楽が素晴らしい、と思わされるきっかけになった作品ってあるんですか?

「そういうことではなくて、やりたいことがあるから、そのために」

--例のジャケットの? それがベースになっている?

「そう! それがベース。そのベースがあるから、それに必要な知識だったり、見せ方を学んだり」

--話がそっちに行きがちなので、また舞台の話に戻しましょう。今回の香蓮のどこ見てほしいですか?

「斬りたくないのに斬らなければならない、だから“闇猫”なんですけどね。人を斬るってすごく残酷なことだと思うんですよ。その中で見せる優しさが香蓮にはあって、すごく凛としていたり、冷酷な部分もあったりするんですけど、その中で見せる優しさ。でも斬っていかなければならない……。女盗賊ということで何かを盗むと思うんですけど、ただ盗むんじゃなくて、悪いことをしていた人への仕返しや、それを必要としている人のために盗むのか、まだ脚本を読む前なのでわからないんですけど……」

--決してただのワルではない?

「そうです、ただのワルではないことを私は言いたい(笑)。“闇猫”という愛称だけど、そこには理由があって。人を斬るのも盗みをやるのも、そこに理由がある」

--そこに人情がある?

「そう愛情がある。そうじゃないと……。ハッピーに終わる物語であってほしいいし、それを見て感動したとか、『よし頑張ろう!』か、観てくれた方にそう思えるような物をつくれたらいいなと思います!」

--期待しています!

〈プロフィール〉

小澤奈々花(おざわ ななか)

1999年5月27日生まれ、新潟県出身。
2012年、「第13回全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリを受賞したことをきっかけにデビュー。翌年からアイドルグループ・X21の中心メンバーとして2018年まで活動。個人としてもモデル、女優を中心に幅広く活躍中。

株式会社TATE・劇団 東京侍踊社 presents 2024夏公演『女盗賊 闇猫組』は7月13日 (土) ~ 7月15日 (月・祝)に座・高円寺にて上演。

【あらすじ】(※資料より)
「神出鬼没の盗賊団!アタイたちが闇猫組だ!」

江戸の街では、“闇猫組“と名乗る盗賊団が暗躍をし、火付盗賊改方の“長谷川平蔵“が取り締まりを強化していた。そこに、“越後屋満智子“ “岡崎友之進“が加わり、新たな金儲けを画策する。一方、人気絵師の“写楽“は次の浮世絵画の題材を探して、幼馴染の“香蓮“に会いに行く。
バラバラの物語が、時間が経つにつれ混じり合い絡み合うことになる。

痛快なキャラクターが戦って踊って、笑って泣いて、五感フル活動のエンタメ時代劇。“闇猫組“とは一体何者なのか??
江戸の文化を新たな解釈で創作するオリジナル物語。

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