【木下彩音インタビュー】初ヒロイン映画『Bittersand』が公開中「一番最後まで観てください! 物語の最後に…」

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2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン #kawaii』でグランプリ受賞をきっかけにデビュー、女優活動を中心に、最近ではバラエティ番組『THE突破ファイル』(日本テレビ系)の“突破交番”でも人気の木下彩音さん。今回初ヒロインを務めた映画『Bittersand』が公開された。本作の撮影時の思い出を振り返ってもらうとともに、今後への意気込みを語ってくれた。

高校生活は青春の輝かしき1ページ。しかしすべての人が、美しい記憶ばかりを持っているわけではない。何者かが黒板に描いたクラスの男女の爛れた相関図によって、誹謗中傷の的となり日常が暗転した、暁人(井上祐貴)と絵莉子(木下彩音)。それから二人の時計は止まったままだった。7年後、運命的な再会をきっかけに、二人の想いを行き違わせた“相関図”事件の真実がついに明らかにされる。……木下さんをはじめメインキャストが、高校生時代と社会人となった7年後の、二つの時代を演じていることでも話題の作品だ。

--今回初ヒロイン作ということで、それまでの作品と比べて、気持ち的な違いはありましたか?

「やっぱり“やってやるぞ!”という気持ちは強かったです。実は“大丈夫かな”と不安に思うこともありました、撮影が始まる前は。でも撮影が始まってしまえば、“やるしかない”という気持ちの切り替えができました。台本をもらってから何度も読んで、自分で考えて、こう演じたいというものができてきたので、それが“頑張ろう!”という思いに変わったんだと思います」

--役柄的に笑顔がほぼないお芝居になりましたね。

「自分にとっても挑戦であったし、目のやりどころとか目力の感じをすごく意識して演じました。強ばりすぎないようにと。私、この作品をやるまで気付かなかったんですけど、目がすごく動いちゃうみたいで。目の動きについて監督から指示をいただくことがあって、それは新たな発見で、意識したところでした」

--絵莉子は高校時代のつらい出来事があって心を閉ざしている。でもただ頑なにというのとも違うし、微妙なニュアンスを表現するのは難しかったのかもしれません。

「そうなんですよ。“それ(7年前の学校での出来事)をずっと引きずっているのか”と見ている人に思われすぎないように、そうじゃなくて、自分の中の気持ちの整理ができていることを知っていて、そのうえでどう接したらいいかという、その葛藤があって……。“そのことだけを引きずっているわけではない”というのを見ている人にどう伝わるのかなというのを考えました」

--撮影の順番って物語の順通りに?

「バラバラでした。さっきまでめちゃめちゃ笑っていたのに、次は教室で黒板に書かれた内容を見て動揺するシリアスなシーンがあったり……」

--たとえば校内でのシーンはまとめて撮るという形ですね。

「そうですね。でも思ったよりもすぐに切り替えられて、シリアスなシーンでもすっと入り込めました。私も自分のことのように悲しくなっちゃってたので、自然と役の気持ちになっていました」

--おそらく木下さんは絵莉子ほどのつらい経験はしていなかったと思いますが、その感情は理解できた?

「自分の高校生時代と違いすぎて、こういう思いをした人もいたのかなと思うと悲しくなっちゃって……。私はグループでワイワイ楽しんでいることが多い学生時代でしたが、この役では私が攻撃されている立場なので、いろいろ考えていたらせつなくなりました。
嫌がらせとかいじめって今も大きな問題になっています。私が作品を通じて経験してもダメージが強かったので、本当にこういう目に遭う人が少しでも減ればいいなと思いました」

--木下さんの場合、つらい役をやるとどっぷり入ってしまうほう? 撮影期間中は、お芝居をしていないとき、普段の生活でも気持ち的に暗くなってしまったり。

「そうですね、結構つらくなっちゃうほうです」

--だからこそお芝居をすると、絵莉子がすっと自分の中に入ったのかもしれません。

「教室に入ってきて、みんなからばーっとひどいことを言われる場面では泣いちゃダメだったんですけど、すごく泣いちゃったりとか、感情が昂りました。監督から『ここは頑張ってこらえて、次の屋上のシーンで泣けるから』と。でも絵莉子の気持ちになってつらくなり堪えるのが大変でした」

--芝居をしていて感情が溢れ出したのでしょうね。でも、やっぱり監督による見せ方のプランもありますから、それに従わなければならず……。

「でも撮影に入る前に、監督が役の気持ちの流れなどについて私たちの意見を聞いてくださって『このシーンどう思う?』『じゃあそれでやってみよう』というやりとりがあって、『このときは目線を外してみようか』などアドバイスもいただきながらの撮影だったので、学びながら撮影に臨めました。撮影前にしっかりと話し合いができて、コミュニケーションをとれていたのがよかったです」

--今回高校生時代と7年後の社会人としての絵莉子、二つの時代を演じていますが、お話を聞いていると“演じ分けた”という意識ではなく……。

「はい、一つの流れで考えて演じました。7年でそこまで変わりすぎても見ている人が“あれっ!?”と思われるといけないと思ったので」

--映画では二つの時代が交錯するように描かれますが、画面には出てこない、その間の時代のことについて考えたりも?

「はい。井上くんと、絵莉子が暁人と会うまでの期間に何があったのかということを話し合いました。また『絵莉子は会社内で働いているときは笑顔を見せているんだと思う』とか。『普通に社会人をしている絵莉子は多分人と馴染めているんじゃないかな、期待を込めてそうだと思うけどな、私は』とか自分の考えを話しながら」

--完成した作品を見て、どんな印象でしたか?

「『ああ、懐かしいな』という思いでした」

--撮影を行ったのは?

「2年前ですね。懐かしいなと思ったのと同時に、ほっとしたというか、『よかったな』という気持ちになりました」

--撮影したときはまだ女優としてのキャリアがあまりない状態で、ヒロインに挑戦だったんですね。

「そうですね。手探り手探りでやっていた時代で、たくさんの同世代の共演者の方たちにも助けられたなと思います」

--この作品で特に観てもらいたいところは?

「最後まで観てください! 物語の最後の最後でわかることがあるので、エンドロールが終わったあとまで観てほしいです。初めてヒロイン役を演じさせていただいた作品なので、最後まで見届けてもらいたいなと思います」

--ラストシーンでの表情が印象的です。

「その部分は素の私に近かったかもしれないです。最後に撮ったので、スッキリした気持ちで自然な表情を出せたかなと思います。ラストの表情は感情の思うままに出せたかなと」

--登場人物のセリフの中で、今の時代だからこそのストレートなメッセージもありますね。

「暁人が話すセリフで心に刺さった内容のものがあります。だから観てくださる方の心にも刺さると思います」

--デビューして今年で……?

「デビューして6年、9月で7年目に入ります。この作品は3年目とか4年目に撮影しました」

--木下さんの印象って、笑顔が似合う感じだったり、お嬢様っぽい雰囲気だったり、そういう印象で見ると、この作品での姿にはギャップを感じるのかも。

「初めてのお芝居『ウルトラマンR/B』のときは、笑わないというかクールな役柄だったので、特撮ファンの人にとってはその印象は強いかもしれないです。でも“突破交番”きっかけで知ってくださった方だと、『えっ、全然違う、笑わないの?』という声もあって、私を知ってくださった時期によって反応が違うのかもしれません」

--今後女優として挑戦してみたいことは?

「もっともっといろんなジャンルのお芝居に挑戦していきたいと思います。現実味のない役だったり、今回も笑わない役柄で真意がわかりにくい感じでしたが、もっと何考えているんだろうとか、観ている人にとっていろんな捉え方をできるお芝居、サイコパスじゃないけど、もっと謎めいた役柄などもやってみたい。普段の自分じゃない自分になれる役柄を演じ、それを通して私という人物のいろんな面を見てもらえたらうれしいなと思います。私、特技といえるものがほしいなと思っていて、今アクションも勉強したいなという気持ちもあります。新たな挑戦をどんどんしていきたいなと思います!」

木下彩音(きのした あやね)
2000年2月21日生まれ、京都府出身。2015年「第40回ホリプロタレントスカウトキャラバン #kawaii』でグランプリ受賞をきっかけにデビュー、これまで『ウルトラマンR/B』(テレビ東京)で美剣サキ役で出演するなど女優活動を中心に、現在は『THE突破ファイル』(日本テレビ系)、『めざましテレビ』(フジテレビ系 ※イマドキガール)などでも活躍中。

『Bittersand』は6月25日(金)シネ・リーブル池袋、UPLINK吉祥寺他、全国順次公開 配給=ラビットハウス  http://bittersand.net
(C)Bittersand 制作委員会

ヘアメイク/松山麻由美 スタイリング/AZUNA